権利関係

相続・遺言・配偶者居住権(人の死と財産の行方)

権利関係読む目安 約17分図 4場面つき

この単元で分かること

  • だれが相続人になるのか、その順位と法定相続分、代襲相続のルールを学びます。
  • 相続を承認するか放棄するかを選ぶことと、遺産を分けるときの決まりを学びます。
  • 遺言・配偶者居住権・遺留分が、残された人の生活をどう支えるかを学びます。

この単元のはじまりの場面

場面

山本和子さんは、亡くなった父の一戸建てを、兄と二人で相続することになりました。「兄と私は、どれだけずつ持つのですか」と、山本さんはみなと不動産で聞きました。木村健一さんは「相続人が子の二人だけなら、法定相続分は2分の1ずつだよ。ただ、家をどう分けるかは話し合って決めるんだ」と答えました。佐藤さくらさんは、割合と分け方が別の話だと気づきました。

相続人と順位約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 2回配偶者は、いつも相続人になります。血族の相続人がいるときは、…

相続は、人の死亡によって始まります。財産上の権利義務が、一定の範囲の人に引き継がれます。

根拠: 民法 882

★ 過去問で2回

配偶者は、いつも相続人になります。血族の相続人がいるときは、その人と同じ順位に立ちます。配偶者の連れ子は、被相続人(亡くなった人)の子ではないので相続人になりません。

根拠: 民法 890、民法 887条1項

過去問に出た

血族の相続人には順位があります。まず子、次に直系尊属、次に兄弟姉妹です。

根拠: 民法 887条1項、民法 889条1項、民法 889条1項1号、民法 889条1項2号

判定の流れ血族のうち、だれが相続人になるか

子(代襲する孫など)がいるか?はい子が相続人。親や兄弟姉妹は入れないいいえ直系尊属(親など)がいるか?はい直系尊属が相続人。兄弟姉妹は入れないいいえ兄弟姉妹がいるか?はい兄弟姉妹が相続人(代襲は甥や姪まで)いいえ血族の相続人はいない

配偶者は、どの場合もいつも相続人になる。

根拠: 民法 890、民法 887条1項、民法 889条1項、民法 889条1項1号、民法 889条1項2号、民法 887条2項、民法 889条2項

事例

山本さんの父が亡くなり、母と山本さんがいました。母は配偶者として、山本さんは第1順位として、どちらも相続人になります。父の両親は相続人になりません。

根拠: 民法 890、民法 887条1項

子が先に亡くなっているとき、相続欠格や廃除で相続権を失ったときは、その子が代わりに相続人になります。これを代襲相続といいます。

根拠: 民法 887条2項

事例

山本さんの兄が父より先に亡くなり、兄に子(甥)がいました。甥が兄に代わって相続人になります。甥が父の直系卑属でなければ代襲できません。

根拠: 民法 887条2項

過去問に出た

兄弟姉妹の代襲は、甥や姪までです。その子はさらに代襲しません。

根拠: 民法 889条2項、民法 887条2項

相続を放棄した人は、初めから相続人でなかったものとみなされます。その子も代襲できません。

根拠: 民法 939

覚えるコマ

覚える代襲相続は、どこまで認められるか?根拠 887条2項・889条2項
代襲する・子が相続開始前に死亡 → その子が代襲(887条2項)・兄弟姉妹の代襲は甥・姪まで(889条2項)代襲しない・相続を放棄した者の子(939条)・縁組前の養子の子(887条2項ただし書)第1順位の子(代襲者を含む)がいれば、直系尊属は相続人にならない。

兄弟姉妹の代襲は甥・姪まで。放棄した者の子は代襲しない。

間違えやすいところ:甥・姪の子まで再代襲すると考えると間違える

代襲相続は、どこまで認められるか? 兄弟姉妹の代襲は甥・姪まで。放棄した者の子は代襲しない。

要点過去問に出た

順位は子、直系尊属、兄弟姉妹です。配偶者はいつも相続人です。

根拠: 民法 887条1項、民法 890

ひっかけ

第1順位の子がいれば、直系尊属は相続人になりません。順位が上がると下の順位は入れません。

根拠: 民法 889条1項

法定相続分と特別受益約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 2回代襲相続人の相続分は、代襲された人が受けるはずだった分と同じ…

同じ順位の相続人が複数いるときは、法律で決まった割合に従います。これが法定相続分です。

根拠: 民法 900条、民法 900条4号

表
相続人の組合せ配偶者血族相続人
配偶者と子2分の12分の1(子で等分)
配偶者と直系尊属3分の23分の1
配偶者と兄弟姉妹4分の34分の1

根拠: 民法 900条1号、民法 900条2号、民法 900条3号

数字の比べ配偶者の法定相続分

子がいる2分の1親がいる3分の2兄弟姉妹4分の3

残りを、血族の相続人が等分する。子がいれば配偶者の取り分が最も小さい。

根拠: 民法 900条1号、民法 900条2号、民法 900条3号

事例

山本さんの父が亡くなり、母と子(山本さんと兄)がいました。母は2分の1、山本さんと兄はそれぞれ4分の1ずつです。

根拠: 民法 900条1号、民法 900条4号

父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹の相続分は、両方同じ兄弟姉妹の2分の1です。

根拠: 民法 900条4号

★ 過去問で2回

代襲相続人の相続分は、代襲された人が受けるはずだった分と同じです。

根拠: 民法 901条1項

被相続人は、遺言で相続分を定めたり、第三者に委託したりできます。

根拠: 民法 902条1項

生前に贈与を受けた相続人がいるときは、贈与額を加えた額を相続財産とみなして計算し、その贈与額を差し引きます。これが特別受益です。

根拠: 民法 903条1項

事例

山本さんの父は生前、子である兄に自宅の購入資金を贈与していました。遺産分割では、その額を相続財産に足して相続分を計算し、兄の取り分から贈与額を引きます。

根拠: 民法 903条1項

婚姻期間20年以上の夫婦で、居住用の建物や敷地を贈与したときは、持戻しを免除する意思があったと推定されます。

根拠: 民法 903条4項

覚えるコマ

覚える法定相続分は、相続人の組み合わせでどう変わるか?根拠 900条
配偶者と子配偶者2分の1、子2分の1(900条1号)配偶者と直系尊属配偶者3分の2、直系尊属3分の1(2号)配偶者と兄弟姉妹配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1(3号)父母の一方だけが同じ兄弟姉妹は、全血の兄弟姉妹の2分の1(4号)。

配偶者は、直系尊属と3分の2、兄弟姉妹と4分の3、子と2分の1。

間違えやすいところ:直系尊属の3分の2と、兄弟姉妹の4分の3を入れ替えると間違える

法定相続分は、相続人の組み合わせでどう変わるか? 配偶者は、直系尊属と3分の2、兄弟姉妹と4分の3、子と2分の1。

要点

法定相続分は2分の1・3分の2・4分の3が軸です。特別受益は、いったん足してから引きます。

根拠: 民法 900条1号、民法 903条1項

ひっかけ

特別受益は、贈与額を引くだけではありません。まず相続財産に足して、相続分を計算します。

根拠: 民法 903条1項

相続の承認と放棄約3分

場面

山本さんは、父に借金があるかもしれないと不安になりました。「相続したくなければ、どうすればいいですか」と山本さんは聞きました。木村健一さんは「相続を知った日から3か月以内に、承認するか放棄するかを決める。何もしなければ、全部引き継ぐことになるよ」と答えました。一度決めたら覆せないのが原則だと聞いて、山本さんは兄と相談してから決めることにしました。

根拠: 民法 920、民法 915条1項、民法 919条1項、民法 921条2号

相続人は、相続するかしないかを選べます。何もしなければ、財産も借金も全部承継します。

根拠: 民法 920

過去問に出た

相続の開始を知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のどれかをします。単純承認は財産も借金も全部を引き継ぐこと、限定承認は相続で得た財産の範囲で引き継ぐことです。放棄(相続放棄)は相続しないことです。この期間は伸ばせます。

根拠: 民法 915条1項

時系列相続を知ってからの3か月

知った日相続の開始を知った3か月以内単純承認・限定承認・放棄のどれかをする期間の後何もしなければ単純承認とみなされる3か月

承認も放棄も、一度したら撤回できない。放棄は家庭裁判所に申述する。

根拠: 民法 915条1項、民法 919条1項、民法 921条2号、民法 938、民法 939

事例

山本さんは、父が亡くなったことを知った後、借金が多そうなので、3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄を申述しました。

根拠: 民法 915条1項、民法 938

承認も放棄も、3か月の期間内であっても撤回できません。一度決めたら覆せないのが原則です。

根拠: 民法 919条1項

限定承認は、相続で得た財産の限度で債務を弁済すればよいという承認です。相続人が複数いるときは、全員が共同でしなければなりません。

根拠: 民法 922

相続財産を全部または一部処分すると、単純承認をしたものとみなされます。保存行為と、短期の賃貸は除きます。

根拠: 民法 921条1号

事例

山本さんは、相続した家を売却しました。これは相続財産の処分なので、単純承認したものとみなされます。壊れた屋根の補修なら保存行為で、みなされません。

根拠: 民法 921条1号

3か月以内に限定承認も放棄もしなかったときも、単純承認をしたものとみなされます。

根拠: 民法 921条2号

放棄した後でも、相続財産を隠したり自分のために使ったり、悪意で目録に載せなかったときは、単純承認とみなされます。

根拠: 民法 921条3号

相続放棄は家庭裁判所に申述します。放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされます。

根拠: 民法 938、民法 939

覚えるコマ

覚える相続の承認・放棄は、いつまでに、どうするか?根拠 915条1項
期間相続の開始を知った時から3か月以内(915条1項)撤回熟慮期間内でも撤回できない(919条1項)限定承認共同相続人の全員が共同してのみできる(923条)放棄家庭裁判所に申述する(938条)相続財産の処分は、法定単純承認(921条1号)。

知った時から3か月以内。熟慮期間内でも撤回できない。

間違えやすいところ:財産を処分しても、承認したことにはならないと考えると間違える。単純承認とみなされる

相続の承認・放棄は、いつまでに、どうするか? 知った時から3か月以内。熟慮期間内でも撤回できない。

要点

熟慮期間は3か月で、撤回できません。財産を処分すると単純承認とみなされます。

根拠: 民法 915条1項、民法 919条1項、民法 921条1号

ひっかけ

3か月以内ならいつでも撤回できる、ではありません。承認も放棄も撤回できません。

根拠: 民法 919条1項

遺産分割約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 3回分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じます。ただし、第三…

相続人が複数いるときは、遺産をどう分けるかを話し合います。これが遺産分割です。

根拠: 民法 907条1項

遺産分割では、遺産の種類や性質、各相続人の年齢や生活の状況など、一切の事情を考慮します。

根拠: 民法 906

協議が調わないときは、各共同相続人が家庭裁判所に分割を請求できます。

根拠: 民法 907条2項

事例

山本さんの父の遺産をめぐって、山本さんと兄の話し合いがまとまりませんでした。山本さんは家庭裁判所に遺産分割を請求できます。

根拠: 民法 907条2項

★ 過去問で3回

分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません。分割前に生じた賃料は、遺産とは別の財産として、各相続人が相続分に応じて取得します。

根拠: 民法 909、判例 最判 平成17年9月8日

預貯金債権は、各共同相続人が、相続開始時の債権額の3分の1に自分の相続分を掛けた額まで、単独で行使できます。ただし、1つの金融機関ごとに法務省令で定める額(150万円)が上限です。

根拠: 民法 909条の2

事例

石井さんの預金が900万円で、相続人は妻と長男でした。妻は3分の1の300万円に自分の相続分2分の1を掛けた150万円まで、1人で引き出せます。

根拠: 民法 909条の2

過去問に出た

共同相続した預貯金債権は、当然に分割されるものではなく、遺産分割の対象になります。

根拠: 民法 909条の2

過去問に出た

被相続人は遺言で、相続開始から5年を超えない期間、遺産の分割を禁じられます。

根拠: 民法 908条1項

相続で法定相続分を超えて権利を承継した者は、登記などの対抗要件がなければ第三者に対抗できません。

根拠: 民法 899条の2第1項

覚えるコマ

覚える遺産分割の前に、預貯金はどこまで単独で引き出せるか?根拠 909条の2
遺産分割の前・預貯金債権は当然には分割されず、遺産分割の対象になる(判例)単独で行使できる額(909条の2)・相続開始時の債権額の3分の1×法定相続分(法務省令の上限)まで遺産分割は、相続開始の時にさかのぼって効力を生ずる(909条)。

預貯金債権の3分の1×法定相続分まで、単独で行使できる。

間違えやすいところ:預貯金債権は、相続の開始と同時に相続分で当然に分割されると考えると間違える(判例)

遺産分割の前に、預貯金はどこまで単独で引き出せるか? 預貯金債権の3分の1×法定相続分まで、単独で行使できる。

要点

遺産分割は協議が原則、まとまらなければ家庭裁判所です。預貯金は3分の1まで単独で行使できます。

根拠: 民法 907条2項、民法 909条の2

ひっかけ

預貯金は相続と同時に法定相続分で分かれる、ではありません。遺産分割の対象になります。

根拠: 民法 909条の2

遺言と遺贈約2分

遺言は、法律が定めた方式に従わなければできません。方式を外れると効力が生じません。

根拠: 民法 960

遺言者は、包括または特定の名義で、財産の全部または一部を処分できます。

根拠: 民法 964

遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じます。

根拠: 民法 985条1項

事例

山本さんの父は遺言で自宅を山本さんに贈ると書きました。父が亡くなった時に、その遺贈の効力が生じます。

根拠: 民法 985条1項

受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄できます。生存中は放棄できません。

根拠: 民法 986条1項

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有します。

根拠: 民法 990

遺言執行者(遺言を実行する人)は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理など必要な一切の行為をする権利義務を負います。

根拠: 民法 1012条1項

遺言執行者があるときは、相続人は遺言の執行を妨げる行為ができません。違反した行為は無効です。

根拠: 民法 1013条1項、民法 1013条2項

ただし、その無効を善意の第三者に対抗することはできません。

根拠: 民法 1013条2項

事例

遺言執行者がいるのに、相続人である兄が遺言の対象の土地を田中さんに売りました。この売買は無効ですが、田中さんが事情を知らなかったなら、兄は田中さんに無効を主張できません。

根拠: 民法 1013条1項、民法 1013条2項

過去問に出た

「相続させる」という遺言は、特段の事情がないかぎり、遺産分割の方法の指定と解されます。

根拠: 民法 908条1項

特定の財産を相続させる遺言では、遺言執行者は、相続人が対抗要件を備えるために必要な行為ができます。

根拠: 民法 1014条2項

表
遺言の方式証人の数やり方
公正証書遺言2人以上遺言者本人が公証人(公の証明をする人)に遺言の趣旨を口授する
死亡の危急に迫ったとき3人以上その1人に遺言の趣旨を口授する
船舶が遭難し、死亡の危急に迫ったとき2人以上口頭で遺言する

根拠: 民法 969条1項、民法 969条1項1号、民法 969条1項2号、民法 976条1項、民法 979条1項

未成年者や、推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族は、遺言の証人になれません。

根拠: 民法 974条、民法 974条1号、民法 974条2号

覚えるコマ

覚える遺言執行者がいるとき、相続人が執行を妨げたらどうなるか?根拠 1013条
遺言執行者がいるとき(1013条1項)・相続人は、遺言の執行を妨げる行為ができない妨げる行為をしたとき(1013条2項)・その行為は無効・善意の第三者には対抗できない遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる(985条1項)。

妨げる行為は無効。ただし善意の第三者には対抗できない。

間違えやすいところ:妨害行為は、善意の第三者に対しても無効だと考えると間違える

遺言執行者がいるとき、相続人が執行を妨げたらどうなるか? 妨げる行為は無効。ただし善意の第三者には対抗できない。

要点

遺言は死亡の時に効力が生じます。遺言執行者があると、相続人は執行を妨げられません。

根拠: 民法 985条1項、民法 1013条1項

ひっかけ

遺言執行者がある場合の妨害行為は、誰に対しても無効を主張できる、ではありません。善意の第三者には主張できません。

根拠: 民法 1013条2項

配偶者居住権約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 2回存続期間は配偶者の終身の間です。遺産分割の協議や遺言で別段に…
  • ★ 2回居住建物の所有者は、配偶者に配偶者居住権の設定の登記を備えさ…
  • ★ 2回配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意で使わなければ…

長年住んだ家を配偶者に残したいという場面のために、配偶者居住権という仕組みができました。

根拠: 民法 1028条1項

配偶者は、被相続人の建物に相続開始時に住んでいて、遺産分割や遺贈で権利を取得したときは、その建物を無償で使う権利を得ます。

根拠: 民法 1028条1項

ただし、被相続人が相続開始時にその建物を配偶者以外の人と共有していたときは、成立しません。

根拠: 民法 1028条1項

事例

石井さんは自宅を単独で所有し、妻と住んでいました。石井さんが亡くなり、遺産分割で妻が配偶者居住権を取得しました。妻はその家に無償で住み続けられます。

根拠: 民法 1028条1項

★ 過去問で2回

存続期間は配偶者の終身の間です。遺産分割の協議や遺言で別段に定めれば、その定めによります。

根拠: 民法 1030

★ 過去問で2回

居住建物の所有者は、配偶者に配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。

根拠: 民法 1031条1項

★ 過去問で2回

配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意で使わなければなりません。配偶者居住権は譲渡できず、所有者の承諾がなければ、改築や増築をすることも、第三者に使わせることもできません。

根拠: 民法 1032条1項、民法 1032条2項、民法 1032条3項

配偶者が用法に違反し、催告しても是正しないときは、所有者は意思表示で配偶者居住権を消滅させられます。

根拠: 民法 1032条4項

過去問に出た

配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担します。

根拠: 民法 1034条1項

配偶者短期居住権は、相続開始時に無償で住んでいれば当然に生じる権利です。帰属が確定した日か、相続開始から6か月のいずれか遅い日まで続きます。

根拠: 民法 1037条1項、民法 1037条1項1号

事例

石井さんが亡くなり、自宅に住んでいた妻は、遺産分割で帰属が決まるまではその家に住み続けられます。帰属確定日か相続開始から6か月の遅い日までです。

根拠: 民法 1037条1項1号

配偶者が配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は生じません。

根拠: 民法 1037条1項

覚えるコマ

覚える配偶者居住権と配偶者短期居住権は、どう違うか?根拠 1030条・1032条2項
配偶者居住権・遺産の分割又は遺贈により取得・原則として配偶者の終身の間(1030条)・譲渡できない(1032条2項)配偶者短期居住権・相続開始時に無償で居住していれば当然に発生・帰属確定日又は相続開始から6か月のいずれか遅い日まで(1037条1号)

居住権は原則終身で譲渡できない。短期居住権は当然に発生する。

間違えやすいところ:配偶者居住権を、第三者に譲渡できると考えると間違える

配偶者居住権と配偶者短期居住権は、どう違うか? 居住権は原則終身で譲渡できない。短期居住権は当然に発生する。

要点

配偶者居住権は終身で譲渡できません。短期居住権は6か月が目安で、当然に生じます。

根拠: 民法 1030、民法 1032条2項、民法 1037条1項1号

ひっかけ

配偶者短期居住権は、遺産分割で取り決めなければ生じない、ではありません。無償で住んでいれば当然に生じます。

根拠: 民法 1037条1項

遺留分約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 2回遺留分侵害額の請求権は、相続の開始と侵害を知った時から1年で…
場面

石井正さんは、土地を長男に残したいと考えました。相続人は妻と長男の二人です。「全財産を長男に贈る遺言を書けば、妻には何も残りませんよね」と石井さんは聞きました。木村健一さんは「兄弟姉妹以外の相続人には、最低限の取り分がある。遺留分といって、請求はお金でするんだ」と答えました。石井さんは、遺言を書く前に、妻の取り分を考えることにしました。

根拠: 民法 1042条1項、民法 1042条1項1号、民法 1042条1項2号、民法 1046条1項

遺言で財産を全部他人に贈っても、一定の相続人には最低限の取り分が残ります。これが遺留分です。

根拠: 民法 1042条1項

過去問に出た

遺留分を持つのは、兄弟姉妹以外の相続人です。直系尊属だけが相続人のときは3分の1、それ以外は2分の1です。

根拠: 民法 1042条1項1号、民法 1042条1項2号

相続人が複数いるときは、その割合に各自の法定相続分を掛けた割合になります。

根拠: 民法 1042条2項

事例

石井さんの相続人は妻と長男でした。石井さんは全財産を長男に贈る遺言を残しました。妻の遺留分は、2分の1に妻の法定相続分2分の1を掛けた4分の1です。

根拠: 民法 1042条1項2号、民法 1042条2項

人物関係図遺言で全部贈られたとき、妻はどうするか

全財産を贈るお金を請求石井さん遺言者長男受遺者妻遺留分あり

妻の遺留分は4分の1(2分の1に法定相続分2分の1を掛ける)。物ではなく金銭で請求する。

根拠: 民法 1042条1項1号、民法 1042条1項2号、民法 1042条2項、民法 1046条1項

遺留分を侵害された人は、受遺者や受贈者に対し、侵害額に相当する金銭の支払を請求できます。

根拠: 民法 1046条1項

事例

妻は遺留分4分の1に足りない分を、受遺者である長男に金銭で請求できます。物を取り戻すのではなく、お金で支払ってもらう形です。

根拠: 民法 1046条1項

受遺者と受贈者がいるときは、受遺者が先に負担します。

根拠: 民法 1047条1項1号

★ 過去問で2回

遺留分侵害額の請求権は、相続の開始と侵害を知った時から1年で時効にかかります。相続開始から10年でも消滅します。

根拠: 民法 1048

相続が始まる前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可があるときに限り効力を生じます。

根拠: 民法 1049条1項

共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分には影響しません。

根拠: 民法 1049条2項

覚えるコマ

覚える遺留分の割合は、どう決まるか?根拠 1042条
権利者兄弟姉妹以外の相続人(1042条1項)全体の割合直系尊属のみ3分の1。その他2分の1各自の割合上の割合×各自の法定相続分(1042条2項)請求金銭の支払(1046条1項)時効は、知った時から1年、相続開始の時から10年(1048条)。

直系尊属のみなら3分の1、その他は2分の1。各自は法定相続分を乗じる。

間違えやすいところ:遺留分の請求で、物そのものの返還を求められると考えると間違える。請求できるのは金銭

遺留分の割合は、どう決まるか? 直系尊属のみなら3分の1、その他は2分の1。各自は法定相続分を乗じる。

要点

遺留分は3分の1か2分の1で、請求は金銭の支払です。時効は1年と10年です。

根拠: 民法 1042条1項、民法 1046条1項、民法 1048

ひっかけ

遺留分の請求は、贈られた物そのものを取り戻す請求ではありません。金銭の支払を求める請求です。

根拠: 民法 1046条1項

特別寄与料と契約上の地位の相続約1分

相続人でない親族が、無償で療養看護などの労務を提供して被相続人の財産を守った場合があります。

根拠: 民法 1050条1項

そのような人は、相続の開始後、相続人に対して、寄与に応じた額の金銭を請求できます。これが特別寄与料です。

根拠: 民法 1050条1項

事例

山本さんの父の介護を長年担った父の弟(山本さんのおじ)は、相続人ではありません。おじは、相続人である山本さんに対して、特別寄与料の支払を請求できます。

根拠: 民法 1050条1項

過去問に出た

協議が調わないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できます。ただし、相続の開始と相続人を知った時から6か月、相続開始から1年を過ぎるとできません。

根拠: 民法 1050条1項

相続人は、一身専属のものを除き、一切の権利義務を承継します。

根拠: 民法 896

使用貸借は借主の死亡で終了し、委任は委任者または受任者の死亡で終了します。これらは承継されません。

根拠: 民法 896

事例

山本さんの父が石井さんから車を無償で借りていました。父が亡くなると使用貸借は終了し、山本さん(父の相続人)は借り続けることはできません。

根拠: 民法 896

要点過去問に出た

特別寄与料は、相続人でない親族が請求できます。一身専属の権利は承継されません。

根拠: 民法 1050条1項、民法 896

ひっかけ

使用貸借や委任は相続されません。一身専属の権利義務は承継の対象から外れます。

根拠: 民法 896

婚姻と財産分与約1分

婚姻は18歳にならなければできません。夫婦のどちらのものか分からない財産は、共有と推定されます。離婚すると姻族関係は終わりますが、配偶者が死亡しただけでは姻族関係は当然には終わりません。

根拠: 民法 731、民法 762条2項、民法 728条1項、民法 728条2項

協議離婚をした人は、相手方に財産分与を請求できます。

根拠: 民法 768条1項

協議が調わないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できます。離婚の時から5年を過ぎると請求できません。

根拠: 民法 768条2項

事例

田中大輔さんと美咲さんが離婚し、財産分与の話がまとまりませんでした。大輔さんは離婚から5年以内に、家庭裁判所へ処分を請求できます。

根拠: 民法 768条2項

裁判所は、財産の額、寄与の程度、婚姻期間、生活水準など、一切の事情を考慮して分与の額と方法を定めます。

根拠: 民法 768条3項

寄与の程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとします。

根拠: 民法 768条3項

覚えるコマ

覚える婚姻できる年齢と、財産分与の請求期間は?根拠 731条・768条2項
婚姻18歳にならなければ、できない(731条)離婚の時から5年以内財産分与の協議に代わる処分を、家庭裁判所に請求できる(768条2項)寄与の程度が不明相等しいものとする(768条3項)

婚姻は18歳から。財産分与の請求は、離婚から5年以内。

間違えやすいところ:財産分与の期間を、相続の熟慮期間の3か月や遺留分の1年と取り違えると間違える

婚姻できる年齢と、財産分与の請求期間は? 婚姻は18歳から。財産分与の請求は、離婚から5年以内。

要点

婚姻は18歳から、財産分与の請求は離婚から5年以内です。

根拠: 民法 731、民法 768条2項

ひっかけ

財産分与は決まった割合で必ず分ける、ではありません。一切の事情を考慮して定められます。

根拠: 民法 768条3項

本試験ではこう出ます

本試験では「Aが死亡し、妻Bと子C・Dが相続人となった」のように出ます。相続人の組合せから、法定相続分を読み取ります。

根拠: 民法 900条1号、民法 900条2号、民法 900条3号、民法 900条4号

まとめ

  • 相続は死亡で開始し、配偶者は常に相続人です。血族の順位は子、直系尊属、兄弟姉妹です。
  • 法定相続分は、配偶者と子なら2分の1ずつです。配偶者と直系尊属なら3分の2と3分の1、配偶者と兄弟姉妹なら4分の3と4分の1になります。
  • 特別受益は、贈与額を相続財産に足して相続分を計算し、その額を控除します。
  • 熟慮期間は相続開始を知った時から3か月で、承認も放棄も撤回できません。
  • 遺産分割は相続開始の時にさかのぼりますが、第三者の権利を害せません。預貯金は3分の1まで単独で行使できます。
  • 遺言は死亡の時に効力を生じ、遺言執行者があると相続人は執行を妨げられません。
  • 配偶者居住権は終身で譲渡できず、配偶者短期居住権は帰属確定日か6か月の遅い日まで続きます。
  • 遺留分は直系尊属のみなら3分の1、それ以外は2分の1で、請求は金銭の支払です。時効は1年と10年です。
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