宅建業法

37条書面(契約が成立した後に交付する書面)

宅建業法読む目安 約17分図 4場面つき

この単元で分かること

  • 37条書面を、だれに、いつ、だれの記名で交付するのかを学びます。
  • 売買の書面と貸借の書面で、記載する事項がどう違うのかを学びます。
  • 重要事項説明との役割の違いと、電子で送るときの条件を学びます。

この単元の困りごとを、4コマで見ます。

みなと不動産の会議室。机をはさんで、山本和子さんと田中さんご夫婦が座り、佐藤さくらさんが横に立って手帳を持っている。

佐藤:山本さんの家、田中さんご夫婦が買うことになりました。

大輔:よろしくお願いします。

山本さんの家の玄関前。山本さんが鍵を差し出し、田中さんが書面を持って怪訝な顔をしている。後ろで美咲さんが心配そうにのぞく。

大輔:代金の払い方が、聞いていた話と違うのですが。

山本:そんなはずはありませんよ。

同じ玄関前。木村さんが契約の後に交付しておいた書面を差し出して説明し、田中さんがそれを見て、山本さんがうなずいている。

木村:契約の後にお渡しした書面を見てください。

大輔:あ、払い方がちゃんと書いてありますね。

みなと不動産の会議室。佐藤さんが書面を両手で持ってうなずき、木村さんが横で説明して笑っている。

木村:契約が成立したら、遅滞なく両方に交付する。

佐藤:それが37条書面なんですね。

この単元のはじまりの場面

場面

6月1日、山本和子さんの一戸建て(代金3,000万円)の売買契約が、みなと不動産の媒介で成立しました。みなと不動産は、その日のうちに、山本さんと田中さん夫婦の両方に37条書面を交付しています。7月31日の引渡しの日、田中大輔さんが「代金の払い方が、聞いていた話と違う」と言い出しました。木村健一さんは交付済みの書面を見せて「支払の時期と方法は、ここに記載してあります」と答え、もめごとは収まりました。佐藤さくらさんは「だから契約の後すぐ、両方に交付するんですね」と気づきました。

37条書面とは(契約の後に交付する書面)約3分

過去問に出た

契約が成立すると、宅地建物取引業者(宅建業者)は契約の内容を書いた書面を相手に交付しなければなりません。これが37条書面です。決めたことを、あとから両方が同じ文字で確かめられるようにするための書面です。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

実務では、37条書面のために別の書面を用意するのではなく、契約書をそのまま使うのがふつうです。契約書に必要な事項がすべて記載され、宅地建物取引士の記名があれば、その契約書が37条書面になります。買主が受け取る売買契約書が、そのまま37条書面になっていることが多いのです。貸借では、賃貸借契約書がこれにあたります。宅地建物取引業法が、売買の契約書そのものの作成を求めている、という意味ではありません。

根拠: 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 37条

契約の前に交付する書面は別にあり、これは重要事項説明書(35条書面)といいます。買う人が決める前に、宅地建物取引士が書面を見せながら大事なことを説明します。37条書面は、契約が決まった後に交付する書面で、役割が違うので一方で他方を代えることはできません。

根拠: 宅地建物取引業法 35条1項、宅地建物取引業法 37条1項

左右の比較契約の前の書面と、契約の後の書面

重要事項説明の書面契約の前37条の書面契約の後交付の時期契約が成立するまで契約の後、遅滞なく説明宅地建物取引士が説明する説明は要らない主な内容大事な事項と制限契約で決めた内容

二つは別の義務です。どちらも交付します。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項、宅地建物取引業法 35条1項

事例

6月1日に、山本和子さんの一戸建て(代金3,000万円)の売買契約が、みなと不動産の媒介で成立しました。買主は田中さん夫婦です。みなと不動産は、その日のうちに山本さんと田中さん夫婦の両方に37条書面を交付します。引渡しの日まで待てばよい、というものではありません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

要点

交付の時期は「契約が成立した後の遅滞なく」です。契約の前でも後でもよい、というわけではありません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

ひっかけ

重要事項説明の書面を交付すれば37条書面を省ける、は誤りです。二つは別の義務で、役割も交付の時期も違います。どちらも必要です。

根拠: 宅地建物取引業法 35条1項、宅地建物取引業法 37条1項

重要事項説明にはあっても、37条書面には載らない事項があります。たとえば、土地や建物に付いている抵当権などの登記された権利の内容は、重要事項説明の対象です。マンションのペット飼育を禁じる規約の定めも、同じく重要事項説明の対象です。37条書面は契約で決めた内容を記録する書面なので、これらは載せません。

根拠: 宅地建物取引業法 35条1項1号、宅地建物取引業法施行規則 16条の2第3号、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 規則16条の2第3号関係

営業保証金を供託した供託所とその所在地の説明は、重要事項説明とは別に法令で定められた説明です。37条書面の記載事項ではありません。

根拠: 宅地建物取引業法 35条の2第1項1号

いつ、だれに交付するか約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 3回公正証書で契約を結んでも、37条書面の交付は省けません。公正…
場面

契約のあと、山本さんが事務所に来て「私にも同じ書面が届くのですか」と聞きました。アパートを借りる中村翔さんからも、同じ質問が来ています。佐藤さんは、売買と貸借では交付の相手が違うと気づいて、木村さんに確かめました。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項、宅地建物取引業法 37条2項

交付の相手は、宅建業者がその取引でどんな立場だったかで決まります。次の表のとおりです。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

表
業者の立場交付の相手
自分が当事者(売買・交換で売主や買主になる)契約の相手方
当事者の代理(だれかの代理として契約)契約の相手方と、代理を依頼した人
媒介(仲介)で契約が成立契約の各当事者(売主と買主の両方)

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

人物関係図媒介のときの交付の相手

37条書面37条書面山本さん売主田中さん夫婦買主みなと不動産媒介

自ら売主のときは相手方だけ、代理のときは相手方と依頼者の両方に交付する。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

売買と交換では、自ら・代理・媒介のどれでも交付しなければなりません。貸借はこれと少し違っていて、宅建業者が代理または媒介をしたときだけ交付する書面です。宅建業者が自分で貸主になるときは、交付が定められていません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項

事例

みなと不動産が媒介した山本さんと田中さんの売買では、交付の相手は山本さんと田中さん夫婦の両方です。みなと不動産が山本さんの代理人だったなら、同じく両方です。みなと不動産が山本さんから買って田中さんに売ったなら、田中さんへの売買では田中さんだけです。山本さんからの買い取りでは、山本さんに交付します。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

ひっかけ

相手が宅地建物取引業者だから37条書面はいらない、は誤りです。取引士の記名も必要です。

根拠: 宅地建物取引業法 78条2項

覚えるコマ

覚える自ら当事者として契約したときと、代理・媒介したときで、交付する相手はどう違うか?根拠 37条1項・2項
自ら当事者として契約→ 相手方にだけ1冊代理・媒介したとき→ 2人に1冊ずつ2冊37条書面は、実務ではふつう売買契約書そのものが兼ねる。貸借は、代理・媒介のときだけ交付する(自ら貸主は対象外)。

自ら当事者なら契約の相手方だけ。代理・媒介なら2人に渡す。

間違えやすいところ:35条の重要事項説明の相手(買主だけ)と取り違える

自ら当事者として契約したときと、代理・媒介したときで、交付する相手はどう違うか? 自ら当事者なら契約の相手方だけ。代理・媒介なら2人に渡す。

覚える37条書面を交付する時期は、いつか?根拠 37条1項
会議室。机の上に朱肉と、押印した契約書。木村さんがその場ですぐ青いファイル(37条書面)を田中さんに渡している。佐藤さんが壁の時計を見て驚いている。

契約が成立した後、遅滞なく交付する。

間違えやすいところ:35条の重要事項説明は「契約が成立するまでの間」(時期が逆)

37条書面を交付する時期は、いつか? 契約が成立した後、遅滞なく交付する。

覚える相手が宅地建物取引業者でも、37条書面の交付は省けるか?根拠 78条2項
業者どうしの取引→ 交付は省けない1冊相手が業者でも、宅地建物取引士の記名は必要。35条の書面は、説明なしの交付でよい(35条6項)。

省けない。適用が除かれるのは33条の2と37条の2から43条まで。

間違えやすいところ:業者どうしなら書面も説明も要らない、と考えると間違える(35条は交付だけでよい)

相手が宅地建物取引業者でも、37条書面の交付は省けるか? 省けない。適用が除かれるのは33条の2と37条の2から43条まで。

要点過去問に出た

交付の相手は、媒介のときは売主と買主の両方です。貸借は代理・媒介のときだけで、宅建業者が自分で貸主のときは交付しません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項、宅地建物取引業法 37条2項

★ 過去問で3回

公正証書で契約を結んでも、37条書面の交付は省けません。公正証書なら交付しなくてよいという例外は条文にないからです。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

記名するのはだれか約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 3回佐藤さんは、自分が作った37条書面に自分の名前を書こうとしま…
  • ★ 2回売主と媒介の宅建業者がどちらも関わる売買では、業者ごとに書面…
★ 過去問で3回

佐藤さんは、自分が作った37条書面に自分の名前を書こうとしました。まだ宅地建物取引士ではないので、これはできません。記名するのは宅地建物取引士で、契約を担当した営業の人の名前ではありません。書面を作るのも交付するのも宅地建物取引士でなくてかまわず、宅地建物取引士でなければできないのは記名だけです。

根拠: 宅地建物取引業法 37条3項

宅建業者は、37条書面を作ったら、宅地建物取引士に記名させなければなりません。契約が決まったあとに誰が責任を持つ書面なのかを示すために、資格を持つ人の名前が要るのです。

根拠: 宅地建物取引業法 37条3項

事例

入社1年目の佐藤さくらさんは、まだ宅地建物取引士ではありません。佐藤さんが作った書面には、自分の名前を書けません。みなと不動産は、社内の宅地建物取引士である木村健一さんに記名してもらってから交付します。

根拠: 宅地建物取引業法 37条3項

覚えるコマ

覚える37条書面には、だれが記名し、何をしなければならないか?根拠 37条3項
宅地建物取引士が記名→ 記名だけ記名青いファイル(37条書面)契約の相手方に渡す→ 説明は不要1冊35条書面は契約前に→ 説明する説明押印は求められていない(運用)。

記名は宅地建物取引士が行う。渡すだけで、説明は要らない。

間違えやすいところ:35条書面(重要事項説明書)と取り違える。説明は契約の前に、宅建士がする

37条書面には、だれが記名し、何をしなければならないか? 記名は宅地建物取引士が行う。渡すだけで、説明は要らない。

要点過去問に出た

この書面に記名するのは宅地建物取引士です。押印までは求められておらず、実務では記名だけで足りると考えられています。

根拠: 宅地建物取引業法 37条3項

ひっかけ

専任の宅地建物取引士でなければ記名できない、というのは誤りです。専任とは、その事務所に専属で置く取引士のことです。重要事項説明をした取引士と同じ人でなければならない、というのも誤りで、どちらも条文には書かれていません。実務では、どちらでなくてもよいと考えられています。

根拠: 宅地建物取引業法 37条3項

★ 過去問で2回

売主と媒介の宅建業者がどちらも関わる売買では、業者ごとに書面を作る義務があります。共同で1通を作っても、それぞれの業者が自分の宅地建物取引士に記名させます。媒介業者の取引士が記名したから売主業者の記名は要らない、とはなりません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条3項

表
場面取引士証の提示
重要事項説明のとき相手から求められなくても提示する
37条書面を交付するとき提示そのものの定めはない
取引の関係者から請求があったとき場面を問わず提示する

根拠: 宅地建物取引業法 35条4項、宅地建物取引業法 22条の4

売買・交換の書面で必ず記載する事項約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 5回必ず記載する5つ(中古の建物では確認事項を加えて6つ)と、定…
  • ★ 3回必ず記載するのは、当事者の氏名と住所、宅地や建物を特定する表…
  • ★ 2回中古の建物を売る場合、構造耐力上主要な部分などの状況について…

田中さんが「支払の日は口約束でもよいのですか」と聞きました。売買の書面には、契約で決めていなくても必ず記載する事項があります。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

★ 過去問で3回

必ず記載するのは、当事者の氏名と住所、宅地や建物を特定する表示、代金または交換差金の額とその支払の時期・方法の3つです。これに引渡しの時期と移転登記(所有者の名義を買主に移す登記)の申請の時期が加わり、合わせて5つになります。中古の建物を売る場合には、構造耐力上主要な部分などの確認事項が加わって6つです。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項1号、宅地建物取引業法 37条1項2号、宅地建物取引業法 37条1項3号、宅地建物取引業法 37条1項4号、宅地建物取引業法 37条1項5号、宅地建物取引業法 37条1項2号の2

時系列37条書面に記載した日付(山本さんと田中さんの例)

6月1日契約が成立し、37条書面を交付した7月10日代金3,000万円の支払い7月31日引渡しの時期8月20日移転登記の申請の時期2か月半

契約で決めていなくても、引渡しの時期と移転登記の申請の時期は必ず記載する。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項1号、宅地建物取引業法 37条1項3号、宅地建物取引業法 37条1項5号

事例

山本さんと田中さんの契約では、代金は3,000万円です。支払いは7月10日に一括、引渡しは7月31日、移転登記の申請は8月20日と決まりました。みなと不動産は、この内容を37条書面に記載して、契約の日のうちに両方に交付しています。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項3号、宅地建物取引業法 37条1項4号、宅地建物取引業法 37条1項5号

表
記載する事項記載するとき
当事者の氏名・住所必ず記載する
物件を特定する表示必ず記載する
代金・交換差金の額と支払の時期・方法必ず記載する
引渡しの時期必ず記載する
移転登記の申請の時期必ず記載する
代金・交換差金以外の金銭の授受定めがあるときだけ記載する
契約の解除定めがあるときだけ記載する
損害賠償額の予定・違約金定めがあるときだけ記載する
金銭の貸借のあっせんと、借りられなかったときの措置定めがあるときだけ記載する
不可抗力による損害の負担定めがあるときだけ記載する
契約不適合責任の定め定めがあるときだけ記載する
公課の負担定めがあるときだけ記載する

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項1号、宅地建物取引業法 37条1項2号、宅地建物取引業法 37条1項3号、宅地建物取引業法 37条1項4号、宅地建物取引業法 37条1項5号、宅地建物取引業法 37条1項6号、宅地建物取引業法 37条1項7号、宅地建物取引業法 37条1項8号、宅地建物取引業法 37条1項9号、宅地建物取引業法 37条1項10号、宅地建物取引業法 37条1項11号、宅地建物取引業法 37条1項12号

覚えるコマ

覚える売買・交換の37条書面に、必ず記載する事項はいくつか?根拠 37条1項1号〜5号
1 当事者の氏名・住所2 物件を特定する表示3 代金の額と支払の時期・方法4 引渡しの時期5 移転登記の申請の時期+1 既存の建物のとき2号の2 構造耐力上主要な部分等の状況について、双方が確認した事項

必ず記載するのは5つ。既存の建物なら、双方の確認事項が加わり6つ。

間違えやすいところ:中古の建物で加わるのは「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項」(2号の2)。床面積の記載ではない

売買・交換の37条書面に、必ず記載する事項はいくつか? 必ず記載するのは5つ。既存の建物なら、双方の確認事項が加わり6つ。

要点★ 過去問で5回

必ず記載する5つ(中古の建物では確認事項を加えて6つ)と、定めがあるときだけ記載する7つがあります。「決まっていないから記載しない」が通らないのは、引渡しの時期と移転登記の申請の時期です。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項4号、宅地建物取引業法 37条1項5号

ひっかけ★ 過去問で2回

中古の建物を売る場合、構造耐力上主要な部分などの状況について、売主と買主が確認した事項を記載します。これは必ず記載するもので、「定めがあるときだけ」ではありません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項2号の2

任意的記載事項(定めがあるときに記載する)約1分

田中さんは、住宅ローンのあっせんをみなと不動産に頼みました。「ローンが組めなかったときはどうなるのか、書面に書いてもらえますか」という質問です。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項9号

次のものは、契約で定めを置いたときだけ記載します。代金以外の金銭のやりとり、契約の解除、損害賠償額の予定や違約金を記載します。金銭の貸借のあっせんと、借りられなかったときの扱いです。不可抗力で損害が出たときの負担、契約不適合責任の定め、公課の負担も入ります。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項6号、宅地建物取引業法 37条1項7号、宅地建物取引業法 37条1項8号、宅地建物取引業法 37条1項9号、宅地建物取引業法 37条1項10号、宅地建物取引業法 37条1項11号、宅地建物取引業法 37条1項12号

事例

みなと不動産が、田中さんの住宅ローンを銀行から借りられるように取り持ちました。このときは、あっせんの内容と、ローンが組めなかったときどうするかを記載します。田中さんは、その2つを契約直後に確かめられます。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項9号

覚えるコマ

覚える37条書面に、定めがあるときだけ記載する事項はどれか?根拠 37条1項7号
6 代金以外の金銭の授受7 契約の解除8 損害賠償額の予定・違約金9 金銭の貸借のあっせん10 不可抗力による損害の負担11 契約不適合責任の定め12 公課の負担定めがなければ記載しない。「なし」と記載する義務もない。

6号から12号までの7項目は、定めがあるときだけ記載する。

間違えやすいところ:必要的記載事項(1号〜5号)と取り違える。定めがなければ、記載しなくてよい

37条書面に、定めがあるときだけ記載する事項はどれか? 6号から12号までの7項目は、定めがあるときだけ記載する。

要点

定めがなければ、記載する必要はありません。「特になし」と記載する義務もありません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項

ひっかけ

これらは「記載しなくてよい」のではなく「定めたら記載する」です。契約で決めておきながら書面に載せないのは違反になります。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項6号、宅地建物取引業法 37条1項7号

貸借の書面に記載する事項約2分

場面

社会人1年目の中村翔さんが、みなと不動産の媒介でアパートの貸借契約をしました。借賃は月8万円です。中村さんは「売買と同じ書面なら、移転登記の時期も書いてあるのですか」と聞きました。貸借では、そこに書く欄がないのです。

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項

貸借の書面は、売買の書面の一部をそのまま使います。使うのは、当事者の氏名・住所、物件を特定する表示、引渡しの時期の3つです。これに、契約の解除、損害賠償額の予定や違約金、不可抗力のときの負担が加わります。

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項1号、宅地建物取引業法 37条1項1号、宅地建物取引業法 37条1項2号、宅地建物取引業法 37条1項4号

過去問に出た

貸借だけのものもあり、借賃の額とその支払の時期・方法です。借賃以外の金銭を受け取る定めがあれば、その額・時期・目的も記載します。

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項2号、宅地建物取引業法 37条2項3号

表
記載する事項売買・交換貸借
当事者の氏名・住所記載する記載する
物件を特定する表示記載する記載する
引渡しの時期記載する記載する
契約の解除定めがあれば記載する定めがあれば記載する
損害賠償額の予定・違約金定めがあれば記載する定めがあれば記載する
不可抗力による損害の負担定めがあれば記載する定めがあれば記載する
既存建物の双方の確認事項記載する記載しない
代金・交換差金の額と支払の時期・方法記載する記載しない
移転登記の申請の時期記載する記載しない
公課の負担定めがあれば記載する記載しない
借賃の額と支払の時期・方法記載しない記載する

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項1号、宅地建物取引業法 37条1項2号の2、宅地建物取引業法 37条1項5号、宅地建物取引業法 37条1項12号、宅地建物取引業法 37条2項2号

事例

みなと不動産が媒介で、中村翔さんと貸主の間のアパートの貸借を成立させました。借賃は月8万円で、毎月末日に支払い、引渡しは7月1日です。解除の定めも置きました。みなと不動産は、借賃と支払の時期・方法、引渡しの時期、解除の内容を記載します。移転登記の時期と公課の負担は、記載する欄がありません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項2号、宅地建物取引業法 37条1項5号、宅地建物取引業法 37条1項12号

覚えるコマ

覚える貸借の37条書面で、記載しない事項はどれか?根拠 37条2項1号
売買・交換(1項)・移転登記の時期を記載(5号)・公課の負担も記載(12号)・既存建物は双方の確認(2号の2)貸借(2項)・移転登記と公課は記載しない・既存建物の確認事項も記載しない・借賃の額と支払の時期を記載(2号)貸借で準用されるのは、1項の1・2・4・7・8・10号(2項1号)。

移転登記の時期・公課の負担・既存建物の確認事項は、貸借では記載しない。

間違えやすいところ:売買・交換の書面の記載事項を、そのまま貸借にも当てはめると間違える

貸借の37条書面で、記載しない事項はどれか? 移転登記の時期・公課の負担・既存建物の確認事項は、貸借では記載しない。

要点過去問に出た

貸借では、移転登記の時期・公課の負担・既存建物の確認事項・代金の額を記載しません。かわりに借賃の額が入ります。

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項1号、宅地建物取引業法 37条2項2号

ひっかけ過去問に出た

貸借の書面にも「引渡しの時期」は記載します。貸借にそのまま使うものの中に入っているからです。貸借では記載しない、は誤りです。

根拠: 宅地建物取引業法 37条2項1号

電子メールなどで送るとき(電磁的方法)約2分

田中さんから「書面はメールでもらえますか」と連絡がありました。書面の交付にかえて電子で送ることはできますが、相手の承諾が要ります。

根拠: 宅地建物取引業法 37条4項

判定の流れ37条書面を電子で送れるか

交付する相手から承諾を得たか?はい送らないでほしいという申出があったか?はい電子では送れない。書面を交付するいいえ電子で送れるいいえ電子では送れない。書面を交付する

承諾をもらう相手は、書面を交付する相手と同じ。媒介なら売主と買主の両方。

根拠: 宅地建物取引業法 37条4項3号、宅地建物取引業法施行令 3条の4第1項、宅地建物取引業法施行令 3条の4第2項

承諾をもらう相手は、書面を交付する相手と同じです。みなと不動産の媒介なら、山本さんと田中さん夫婦の両方から承諾をもらわなければなりません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条4項2号、宅地建物取引業法 37条4項3号

事例

みなと不動産は媒介で契約を成立させました。書面を電子メールで送ろうとしています。山本さんと田中さん夫婦の両方から承諾をもらう必要があります。片方だけでは足りません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条4項3号

承諾は、口で言ってもらうだけでは足りません。あらかじめ、どの方法で送るのか、記録の方式はどうするのかを示したうえで、書面か、それに代わる方法で承諾をもらいます。

根拠: 宅地建物取引業法施行令 3条の4第1項

覚えるコマ

覚える37条書面を電子メールなどで提供するには、何が要るか?根拠 37条4項・施行令3条の4
あらかじめ、方法の種類・内容と記録の方式を示す承諾は、書面などでとる口頭だけでは足りない提供すると、書面を交付したものとみなされる3項の記名の規定は適用されない提供を受けない旨の申出があれば提供してはならない。申出の後に再び承諾を得れば、提供できる。

あらかじめ相手方の承諾を得る。承諾は書面などでとる。

間違えやすいところ:口頭の承諾だけで足りると考えると間違える。承諾は書面などでとる

37条書面を電子メールなどで提供するには、何が要るか? あらかじめ相手方の承諾を得る。承諾は書面などでとる。

要点

「承諾」と「申出」は別です。あとから電子で送らないでほしいと言われたら、送ってはいけません。そのあと再び承諾をもらえば、また送れます。

根拠: 宅地建物取引業法施行令 3条の4第2項

ひっかけ

電子で送ると書面を交付したものとみなされ、書面に取引士が記名する決まりは適用されません。かわりに、その書面にかかわる宅地建物取引士が誰かが分かるようにすることが、省令で求められています。

根拠: 宅地建物取引業法 37条4項、宅地建物取引業法施行規則 16条の4の12第2項4号

送り方は大きく2つです。通信回線で送る方法と、記録した媒体(USBメモリなど)を交付する方法です。どちらも、受け取った人が出力して書面にできることが条件です。

根拠: 宅地建物取引業法施行規則 16条の4の12第1項2号、宅地建物取引業法施行規則 16条の4の12第2項1号

電磁的方法で提供したときは、書面を交付したものとみなされます。提供のあとで、あらためて書面を交付する必要はありません。

根拠: 宅地建物取引業法 37条4項

貸借の書面を電子で送るとき約1分

貸借の書面も、同じ手続きで電子に切り替えられます。承諾をもらう相手は、貸借の書面を交付する相手、つまり契約の相手方と代理を依頼した人、または契約の各当事者です。

根拠: 宅地建物取引業法 37条5項、宅地建物取引業法施行令 3条の4第3項

事例

みなと不動産が媒介で、中村翔さんのアパートの貸借を成立させました。中村さんと貸主の双方から承諾をもらえば、電子で送れます。二人とも電子を受け取る用意があるかを、必ず確かめます。

根拠: 宅地建物取引業法 37条5項2号

ひっかけ

貸借の書面を電子で送るときも、申出があれば送れません。売買だけの決まりではありません。

根拠: 宅地建物取引業法施行令 3条の4第3項

守らないとどうなるか約1分

佐藤さんが「もし交付し忘れたら、どうなりますか」と木村さんに聞きました。37条書面を交付しないと、50万円以下の罰金が科せられることがあります。

根拠: 宅地建物取引業法 83条1項、宅地建物取引業法 83条1項2号

あわせて、1年以内の業務停止を命じられることもあり、業務の全部を止められることも、一部だけ止められることもあります。

根拠: 宅地建物取引業法 65条2項、宅地建物取引業法 65条2項2号

事例

もしみなと不動産が37条書面を交付しないまま、引渡しまで進めていたら、どうなっていたでしょうか。田中さんは、あとから契約の内容を確かめる手段を失います。この場合、みなと不動産は罰金の対象になり、業務停止を命じられることもあります。

根拠: 宅地建物取引業法 83条1項2号、宅地建物取引業法 65条2項2号

要点

交付しないことの重さは、契約の相手方が内容を確かめる手段を奪うところにあります。罰金と業務停止の両方がかかります。

根拠: 宅地建物取引業法 83条1項2号

本試験ではこう出ます

本試験では「宅建業者Aが媒介して、BとCの間で売買契約が成立した」のように出ます。まず、交付の相手が自ら当事者・代理・媒介のどれかを読み取ります。

根拠: 宅地建物取引業法 37条1項、宅地建物取引業法 37条2項

まとめ

  • 37条書面は、契約が成立した後の「遅滞なく」交付する書面。
  • 交付の相手は宅建業者の立場で変わる。自ら当事者は相手方、代理は相手方と依頼者、媒介は契約の各当事者。
  • 貸借は代理・媒介のときだけ。宅建業者が自分で貸主のときは要らない。
  • 相手が宅建業者でも省けない。取引士の記名も必要。
  • 記名するのは宅地建物取引士。押印や専任は条文上求められていない。
  • 売買で必ず記載するのは5つ。中古の建物では、双方の確認事項を加えて6つ。
  • 貸借は借賃の額と支払の時期・方法が加わり、移転登記・公課・既存建物の確認事項は入らない。
  • 電子で送るには相手の承諾が要る。承諾は書面などで取り、申出があれば送れない。
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