債権総論(不履行・解除・相殺・連帯債務・保証・債権譲渡)
この単元のはじまりの場面
債務不履行と損害賠償約2分
契約を結ぶと、債務者は約束したとおりに履行する義務を負います。果たせない状態を債務不履行といいます。
根拠: 民法 415条1項
履行が遅れただけのときと、履行そのものができなくなったときとで、扱いが少し違います。債権者が受け取りを拒んで履行の費用が増えたときは、その増加額は債権者の負担です。
根拠: 民法 412条1項、民法 413条2項、民法 415条1項
| 債務の種類 | 遅滞の責任を負う時 |
|---|---|
| 確定期限がある債務 | その期限が到来した時から |
| 期限を定めなかった債務 | 履行の請求を受けた時から |
| 不確定期限がある債務 | 期限の到来後に履行の請求を受けた時か、到来を知った時の早いほうから |
根拠: 民法 412条1項、民法 412条2項、民法 412条3項
田中さんは山本さんに、3月31日までに代金を払うと約束しました。4月1日になると、田中さんは当然に遅滞の責任を負います。期限の定めがなければ、山本さんが請求した時から責任を負います。
根拠: 民法 412条1項、民法 412条3項
履行ができないときは、履行そのものを請求できません。その代わりに損害賠償を請求できます。
根拠: 民法 415条1項
ただし、契約や取引の社会通念に照らして債務者の責めに帰せられない事由のときは、損害賠償を請求できません。
根拠: 民法 415条1項
相手が履行を拒絶する意思を明確に示したときは、解除を待たずに、履行に代わる損害賠償を請求できます。
根拠: 民法 415条2項2号
山本さんは田中さんに土地を売ると約束しましたが、履行期日前に「もう売らない」と明確に伝えました。田中さんは、契約を解除しなくても、履行に代わる損害賠償を請求できます。
根拠: 民法 415条2項2号
通常生じる損害は賠償の対象です。特別の事情で生じた損害も、当事者がその事情を予見すべきだったときは請求できます。
根拠: 民法 416条1項、民法 416条2項
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確定期限は到来時から。期限の定めがなければ請求時から。
間違えやすいところ:原始的不能でも、損害賠償の請求は妨げられない
期限の定めがない債務は、いつから遅滞になるか? 確定期限は到来時から。期限の定めがなければ請求時から。
債務不履行の責任は、帰責事由(債務者に責任を負わせられる事情)があれば発生します。履行不能(履行そのものができないこと)なら、履行に代わる損害賠償です。
根拠: 民法 415条1項、民法 415条2項2号
履行ができなくなれば、いつでも損害賠償を請求できるわけではありません。責めに帰せられない事由なら免れます。
根拠: 民法 415条1項
損害賠償の範囲と金銭債務約2分
損害賠償は、別段の意思表示がなければ、金銭でその額を定めます。
根拠: 民法 417
金銭の支払を目的とする債務では、利率で損害額が決まります。遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率を使います。
根拠: 民法 419条1項
約定利率が法定利率より高いときは、約定利率で計算します。損害の証明は要りません。
根拠: 民法 419条1項、民法 419条2項
田中さんが山本さんに代金100万円を期限までに払わず、1年遅れました。遅延損害金は、遅滞が始まった時点の利率で計算します。山本さんは実際に損害があったことを証明する必要はありません。
根拠: 民法 419条1項、民法 419条2項
金銭債務では、不可抗力があっても責任を逃れられません。地震で送金が遅れても、支払の責任は残ります。
根拠: 民法 419条3項
損害賠償の額は、あらかじめ予定できます。違約金と定めれば、賠償額の予定と推定されます。
根拠: 民法 420条1項、民法 420条3項
田中さんと山本さんは、履行しないときは50万円を支払うと契約書に定めました。田中さんが履行しなければ、山本さんはこの予定額を請求できます。山本さんが履行を求めることも解除することもできます。
根拠: 民法 420条1項、民法 420条2項
損害賠償として目的物の価額の全部を受け取ると、債務者は当然にその物の権利に代位します。
根拠: 民法 422
契約の解除約2分
相手が約束を守らないとき、こちらから契約をなかったことにするのが解除です。
根拠: 民法 541
| 場面 | 必要な手続き |
|---|---|
| 催告解除 | 相当の期間を定めて催告し、期間内に履行がないこと |
| 無催告解除(全部不能) | 催告は不要 |
| 無催告解除(一部不能) | 残存部分だけでは目的を達せられないとき |
| 無催告解除(定期行為) | 特定の日時の経過で目的を達せられないとき |
根拠: 民法 541、民法 542条1項1号、民法 542条1項3号、民法 542条1項4号
全部の履行ができないときや、履行を拒絶する意思を明確に示したときは、催告なしで解除できます。
根拠: 民法 542条1項1号、民法 542条1項2号
一部分だけができないときは、残りでは契約の目的を達せられない場合にかぎり、全体を催告なしで解除できます。
根拠: 民法 542条1項3号
特定の日時や期間内に履行しないと目的を達せられない契約では、その時期を過ぎれば催告なしで解除できます。
根拠: 民法 542条1項4号
不履行が債権者である自分の責めに帰すべき事由によるものであるときは、解除できません。
根拠: 民法 543
判定の流れ契約を解除できるか
催告しても、不履行が軽微なら解除できない。一部の不能は、残りで目的を達せられないとき。
根拠: 民法 541、民法 542条1項1号、民法 542条1項3号、民法 542条1項4号、民法 543
解除すると、各当事者は相手を元の状態に戻す義務を負います。金銭を返すときは、受け取った時から利息を付けます。第三者の権利は害せません。
根拠: 民法 545条1項、民法 545条2項
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全部不能、定期行為の時期経過、一部不能で目的を達せないときなど。
間違えやすいところ:一部不能は、残存部分のみでは目的を達せられないときに限り、全部を解除できる
催告なしで解除できるのは、どんなときか? 全部不能、定期行為の時期経過、一部不能で目的を達せないときなど。
同時履行の抗弁と危険負担約2分
ただし、相手の債務がまだ弁済期にないときは、この拒否はできません。
根拠: 民法 533
双方の責めに帰せられない事由で履行できなくなったときは、債権者は反対給付を拒めます。
根拠: 民法 536条1項
債権者の責めに帰すべき事由で履行できなくなったときは、反対給付を拒めません。債務者が債務を免れたことで利益を得たときは、これを債権者に償還します。
根拠: 民法 536条2項
解除したときも、双方の義務にはこの同時履行の決まりが準用されます。
根拠: 民法 546
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双方に責任がなければ拒める。債権者に責任があれば拒めない。
間違えやすいところ:履行が遅れている間の不能は、債務者の責めに帰すべき事由とみなす
履行不能のとき、代金などの支払いは拒めるか? 双方に責任がなければ拒める。債権者に責任があれば拒めない。
相殺約2分
この節でよく出るのは
- ★ 2回相殺は双方の債務が弁済期にあるときにでき、一方から相手への意…
互いに同じ種類の債権を持ち合っているときは、対当額で帳消しにできます。これが相殺です。
根拠: 民法 505条1項
相殺は双方の債務が弁済期にあるときにでき、一方から相手への意思表示で行います。条件や期限は付けられません。期限の定めのない債権は、いつでも請求できるので弁済期にあります。自分の債務の期限の利益は、放棄して相殺できます。
根拠: 民法 505条1項、民法 506条1項、民法 136条2項
大野さんは小林さんに100万円を、小林さんは大野さんに80万円を支払う関係でした。どちらも弁済期が来ているので、大野さんが相殺を告げれば、大野さんの債務は20万円だけ残ります。
根拠: 民法 505条1項、民法 506条1項
小林さんが大野さんを故意に傷つけ、大野さんは小林さんに損害賠償を請求しました。小林さんは自分が大野さんに持つ貸金債権で相殺する、とは言えません。
根拠: 民法 509、民法 509条1号、民法 509条2号
債権が差し押さえられたときは、差押えの後に取得した債権で相殺して差押債権者に対抗することはできません。
根拠: 民法 511条1項
差押えの前に取得した債権なら、相殺で対抗できます。差押えの原因が前からあった債権も同じです。
根拠: 民法 511条1項、民法 511条2項
銀行は大野さんに貸付債権を持ち、大野さんは銀行に預金債権を持っていました。小林さんがその預金を差し押さえても、銀行は差押え前から持っていた貸付債権で相殺して小林さんに対抗できます。
根拠: 民法 511条1項、民法 511条2項
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差押え前に取得した債権なら対抗できる。後に取得したら対抗できない。
間違えやすいところ:悪意による不法行為や生命・身体の侵害による損害賠償の債務は、相殺で対抗できない
差押えを受けた債権は、相殺で対抗できるか? 差押え前に取得した債権なら対抗できる。後に取得したら対抗できない。
連帯債務約3分
この節でよく出るのは
- ★ 2回反対に、履行の請求などは一人について生じても、他の連帯債務者…
- ★ 2回更改・相殺・混同は全員に効き、履行の請求は一人にとどまります…
田中大輔さん夫婦は、住宅ローンを2人で連帯して借りることにしました。美咲さんは「銀行が夫にだけ請求したら、私には関係ないのですか」と聞きます。木村健一さんは「連帯債務者は、それぞれが全部の履行を請求される立場なんだ。ただ、請求の効果は、請求された一人にしか及ばないのが原則だよ」と答えました。
根拠: 民法 436、民法 441
連帯債務者は、債権者から全部の履行を請求される立場です。一人が全部を払う義務を負います。
根拠: 民法 436
田中さんと美咲さんが連帯して100万円を負担し、負担部分は半分ずつでした。田中さんが山本さんに対して50万円の債権を持ち、相殺を援用すると、100万円の債務は全体として50万円に減ります。援用しない間は、美咲さんは田中さんの負担部分の限度で、50万円まで支払を拒めます。
根拠: 民法 439条1項、民法 439条2項
反対に、履行の請求などは一人について生じても、他の連帯債務者には及びません。これを相対効といいます。免除や、一人のための時効の完成も、他の連帯債務者には及びません。
根拠: 民法 441
山本さんが田中さんにだけ履行を請求しても、その請求は美咲さんには及びません。田中さんへの請求で時効の完成猶予や更新が起きても、美咲さんには及びません。美咲さんの債務にも影響するのは、弁済・更改・相殺・混同などに限られます。
根拠: 民法 441
判定の流れ連帯債務者の一人に起きたこと
履行の請求は、その一人にしか効かない。混同は、その人が弁済したものとみなされる。
根拠: 民法 437、民法 438、民法 439条1項、民法 440、民法 441
償還する資力のない連帯債務者がいるときは、その負担は求償者と資力のある者で分担します。
根拠: 民法 444条1項
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相殺の援用や更改は全員に及ぶ。履行の請求は及ばない。
間違えやすいところ:混同は弁済をしたものとみなす。履行の請求だけは相対効で、他の債務者に効力が及ばない
連帯債務で、他の債務者に効力が及ぶ事由は、どれか? 相殺の援用や更改は全員に及ぶ。履行の請求は及ばない。
更改・相殺・混同は全員に効き、履行の請求は一人にとどまります。この違いは、ある事由の効力が全員に及ぶか、一人にとどまるかを決めます。債権者は、連帯債務者のだれにでも全部の履行を請求できます。
根拠: 民法 438、民法 439条1項、民法 440、民法 441
履行の請求は、全員に効力を及ぼしません。相対的な効力しか持ちません。
根拠: 民法 441
保証債務と連帯保証約3分
この節でよく出るのは
- ★ 3回保証契約は書面でしなければ効力を生じません。口約束では足りな…
- ★ 2回普通の保証人には催告の抗弁と検索の抗弁があり、連帯保証人には…
中村翔さんがアパートを借りるとき、貸主は連帯保証人(先に本人に請求しなくてよい保証人)を求めました。「普通の保証人ではだめなのですか」と中村さんは聞きました。木村健一さんは「普通の保証人は、請求されたら、まず本人に催告してと言える。連帯保証人は、それが言えないんだ。貸主は、本人に先に請求しなくても、連帯保証人に請求できる」と答えました。
根拠: 民法 452、民法 454
保証人は、主たる債務者が払わないときに代わりに払う義務を負います。他人の借金の肩代わりです。
根拠: 民法 446条1項
保証契約は書面でしなければ効力を生じません。口約束では足りないのが原則です。
根拠: 民法 446条2項
保証人の負担が主たる債務より重いときは、主たる債務の限度まで減らされます。契約の後に重くなっても、負担は重くなりません。
根拠: 民法 448条1項、民法 448条2項
中村さんの借金100万円の保証人に、佐藤さんがなりました。契約で佐藤さんが150万円を負担するとされても、佐藤さんの負担は100万円までです。後から中村さんの借金が200万円に増えても、佐藤さんの負担は増えません。
根拠: 民法 448条1項、民法 448条2項
主たる債務者への履行請求による時効の完成猶予や更新は、保証人にも及びます。保証人は、主たる債務者が使える抗弁(相手の請求を拒む主張)を使えます。委託を受けた保証人が事前に通知せず弁済すると、主たる債務者は債権者への抗弁を保証人にも主張できます。
根拠: 民法 457条1項、民法 457条2項、民法 463条1項
債権者が保証人に請求したとき、保証人はまず主たる債務者に催告するよう求めることができます。これを催告の抗弁といいます。
根拠: 民法 452
主たる債務者に弁済の資力があり、執行も容易だと証明できれば、まずその財産を執行させるよう求められます。これを検索の抗弁といいます。
根拠: 民法 453
佐藤さんが中村さんの借金の連帯保証人になりました。債権者である山本さんが佐藤さんに請求しても、佐藤さんは「まず中村さんに催告してほしい」とは言えません。
根拠: 民法 454
左右の比較保証人と連帯保証人
連帯保証人には、催告の抗弁も検索の抗弁もない。
根拠: 民法 446条2項、民法 452、民法 453、民法 454
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連帯保証人には、どちらの抗弁もない。普通の保証人にはある。
間違えやすいところ:連帯保証人について混同があったときは、弁済をしたものとみなされる
連帯保証人には、催告の抗弁・検索の抗弁があるか? 連帯保証人には、どちらの抗弁もない。普通の保証人にはある。
普通の保証人には催告の抗弁と検索の抗弁があり、連帯保証人にはありません。
根拠: 民法 452、民法 453、民法 454
保証契約は口約束でも有効、ではありません。書面でしなければ効力が生じません。
根拠: 民法 446条2項
個人根保証と情報提供約2分
この節でよく出るのは
- ★ 2回個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません。上限…
長く続く取引の借金をまとめて保証する契約を根保証契約といいます。個人が保証人になるものを個人根保証契約といいます。
根拠: 民法 465条の2第2項
個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません。上限がないと保証人の負担が読めないからです。
根拠: 民法 465条の2第2項
大野さんは知人の会社の借入を保証する根保証契約を、極度額を定めずに結びました。この契約は効力を生じません。大野さんは保証責任を負いません。
根拠: 民法 465条の2第2項
| 場面 | 元本についての決まり |
|---|---|
| 元本確定期日の定めがあるとき(貸金の根保証) | 契約日から5年を超える期日の定めは効力を生じない |
| その定めがないとき | 契約日から3年を過ぎる日が元本確定期日になる |
| 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、主たる債務者や保証人が死亡したとき | 元本が確定する |
根拠: 民法 465条の3第1項、民法 465条の3第2項、民法 465条の4第1項、民法 465条の4第1項2号、民法 465条の4第1項3号
山本さんは個人貸金等根保証契約の保証人になりました。契約から2年後に山本さんが死亡すると、その時点で元本が確定します。
根拠: 民法 465条の4第1項3号
主たる債務者が期限の利益を失ったときは、債権者は知った時から2か月以内に保証人へ通知します。怠ると、その間の遅延損害金は保証人に請求できません。この通知は、保証人が個人のときの決まりです。
根拠: 民法 458条の3第1項、民法 458条の3第2項
委託を受けた保証人の請求があれば、債権者は主たる債務の残額などを遅滞なく提供します。
根拠: 民法 458条の2、民法 458条の3第3項
事業のために負担する債務の保証を頼むときの決まりです。主たる債務者が情報を提供せず、または事実と違うことを伝えたとします。債権者がそれを知り得たときは、個人の保証人は保証契約を取り消せます。
根拠: 民法 465条の10第2項
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極度額を定めなければ効力を生じない。個人貸金等根保証は確定期日5年以内。
間違えやすいところ:個人貸金等根保証契約で確定期日の定めがなければ、契約締結の日から3年を経過する日になる
個人根保証の、極度額と元本確定期日の決まりは? 極度額を定めなければ効力を生じない。個人貸金等根保証は確定期日5年以内。
極度額がなければ効かない、確定期日は5年以内・なければ3年、通知は2か月以内です。
根拠: 民法 465条の2第2項、民法 465条の3第1項、民法 465条の3第2項、民法 458条の3第1項
元本確定期日の上限は「契約日から5年」です。5年を超える定めは効力を生じません。
根拠: 民法 465条の3第1項
債権譲渡約3分
この節でよく出るのは
- ★ 2回対抗要件は通知か承諾、第三者へは確定日付です。債務者は対抗要…
- ★ 2回債権譲渡は、現に発生していない債権でもできます。将来生じる債…
債権は、原則として自由に譲り渡せます。売掛金を回収業者に売ることもできます。
根拠: 民法 466条1項
ただし、そのことを知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人には、債務者は履行を拒めます。譲渡人への弁済などで対抗することもできます。預貯金債権だけは例外です。譲渡制限を知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人その他の第三者には、譲渡制限を対抗できます。譲渡制限のある金銭債権が譲渡されたときは、債務者はその全額を供託所に供託できます。
根拠: 民法 466条3項、民法 466条の2第1項
大野さんは田中さんに対する売掛金を小林さんに譲渡しました。契約で譲渡禁止とされ、小林さんがそれを知っていれば、田中さんは小林さんへの支払を拒めます。小林さんが知らなければ、田中さんは拒めません。
根拠: 民法 466条3項
譲渡を第三者に対抗するには、譲渡人が債務者に通知するか、債務者が承諾します。債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書が必要です。
根拠: 民法 467条1項、民法 467条2項
大野さんは債権を小林さんと山本さんの両方に譲渡しました。先に確定日付のある通知を受け取った小林さんが、山本さんに優先します。
根拠: 民法 467条2項
時系列債権を二重に譲渡したとき
どちらも確定日付のある通知。先に届いたほうが優先する。
根拠: 民法 467条1項、民法 467条2項
債務者は、対抗要件が備わるまでに譲渡人に対して生じた事由を、譲受人に対抗できます。
根拠: 民法 468条1項
大野さんの田中さんに対する債権が小林さんに譲渡される前に、田中さんは大野さんに対して相殺の原因を持っていました。対抗要件が備わる前に生じた事由なので、田中さんは小林さんに相殺を対抗できます。
根拠: 民法 468条1項
差押通知と譲渡通知のどちらが先に届いたか分からないときは、双方が優先を主張できません。供託された金銭は、債権額に応じて分け合います。
根拠: 民法 467条2項
譲渡の予約の段階で確定日付のある通知をしても、予約が完結した譲渡の効力を第三者には対抗できません。
根拠: 民法 467条2項
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確定日付のある証書による通知・承諾が要る。
間違えやすいところ:譲渡制限の意思表示があっても、譲渡は有効。悪意・重過失の譲受人には履行を拒める
債権譲渡を第三者に対抗するには、何が要るか? 確定日付のある証書による通知・承諾が要る。
譲渡禁止の特約があっても、譲渡は無効になりません。債務者が履行を拒めるだけです(預貯金債権は例外です)。
根拠: 民法 466条2項、民法 466条3項
弁済と債務引受・更改約3分
この節でよく出るのは
- ★ 3回免責的債務引受は、債権者と引受人の契約でできます。この場合は…
弁済は第三者もできます。ただし、弁済について正当な利益を持たない第三者は、債務者の意思に反して弁済できません。債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは有効です。
根拠: 民法 474条1項、民法 474条2項
中村さんの友人である佐藤さんは、中村さんの借金を勝手に返そうとしました。佐藤さんには正当な利益がないので、中村さんが反対していれば弁済できません。中村さんから委託され、それを債権者である山本さんが知っていたなら弁済できます。
根拠: 民法 474条2項、民法 474条3項
受領権者ではないが、取引の社会通念上受領権者らしく見える人への弁済は、善意で過失がなければ有効です。
根拠: 民法 478
債務を他の人に移す方法に、債務引受(債務を他の人に引き継がせること)があります。併存的債務引受と免責的債務引受の2つです。
根拠: 民法 470条1項、民法 472条1項
| 類型 | 引受人の立場 | 元の債務者 |
|---|---|---|
| 併存的債務引受 | 債務者と連帯して同一内容の債務を負う | 債務は残る |
| 免責的債務引受 | 単独で債務を負う | 債務を免れる |
根拠: 民法 470条1項、民法 472条1項
田中さんの山本さんに対する債務を小林さんが引き受けました。併存的引受なら田中さんと小林さんが連帯して払い、免責的引受なら田中さんは債務を免れ、小林さんだけが払います。
根拠: 民法 470条1項、民法 472条1項
免責的債務引受は、債権者と引受人の契約でできます。この場合は、債権者が債務者に契約をした旨を通知した時に効力が生じます。債務者と引受人の契約でもでき、この場合は、債権者が引受人に承諾をした時に効力が生じます。併存的債務引受は、債権者と引受人の契約でできます。債務者と引受人の契約でもでき、この場合は、債権者が引受人に承諾をした時に効力が生じます。更改後の債務者は、前の債務者への求償権を取得しません。
根拠: 民法 472条2項、民法 514条2項、民法 470条2項、民法 470条3項、民法 472条3項
給付の内容を重要に変えたり、債務者や債権者を交替させたりする契約をすると、前の債務は更改で消滅します。
根拠: 民法 513
更改しても、前の債務の限度で質権や抵当権を新しい債務に移せます。第三者が設定した担保は、その承諾が要ります。
根拠: 民法 518条1項
選択債権約1分
複数の物の中から1つを選んで給付する債権を選択債権といいます。選択権は、別段の定めがなければ債務者に属します。
根拠: 民法 406
山本さんは田中さんに、3台のうち1台の車を引き渡すと約束しました。どれを引き渡すかは、原則として債務者である山本さんが選びます。
根拠: 民法 406
債権が弁済期にあるとき、相手方から相当の期間を定めて催告されても選択しないと、選択権は相手方に移ります。
根拠: 民法 408
山本さんが選ばないまま、田中さんが相当の期間を定めて催告しました。期間内に山本さんが選ばなければ、選択権は田中さんに移ります。
根拠: 民法 408
選択は、債権が発生した時にさかのぼって効力を生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません。
根拠: 民法 411
選択権はまず債務者に、催告で選ばなければ相手方に移ります。選択の効力は発生時にさかのぼります。
根拠: 民法 406、民法 408、民法 411
選択権はいつも債権者にある、ではありません。別段の定めがなければ債務者です。
根拠: 民法 406
本試験では「AのBに対する債権をCに譲渡し、AがBに通知した」のように出ます。通知か承諾か、確定日付があるかで、だれに対抗できるかを決めます。
根拠: 民法 467条1項、民法 467条2項
まとめ
- 履行ができなければ損害賠償を請求できますが、責めに帰せられない事由のときは請求できません。
- 確定期限の債務は期限の到来から、期限の定めのない債務は請求の時から遅滞の責任を負います。
- 金銭債務の遅延損害金は遅滞開始時の利率で決まり、損害の証明は不要で、不可抗力でも免れません。
- 催告解除が原則で、不能・拒絶・定期行為のときは催告なしで解除できます。解除は第三者の権利を害しません。
- 相殺は双方の債務が弁済期にあるときにでき、差押えとの関係では反対債権を取得した時期が分かれ目です。
- 連帯債務では更改・相殺・混同が全員に効き、履行の請求は一人にとどまります。
- 保証契約は書面が要り、普通の保証人には催告の抗弁と検索の抗弁があり、連帯保証人にはありません。
- 個人根保証は極度額が必須です。個人貸金等根保証では、元本確定期日は5年以内です。債権譲渡の対抗要件は通知か承諾、第三者へは確定日付です。