抵当権・担保物権(お金を借りる仕組みを支える権利)
この単元のはじまりの場面
担保物権とは何か、抵当権の性質約2分
お金を貸す人は、返してもらえないときの備えが要ります。その備えが担保で、担保を取る権利を担保物権といいます。
根拠: 民法 369条1項
田中さんが銀行から1000万円を借り、自分の土地に抵当権を付けました。田中さんが返さないと、銀行は土地を競売し、他の一般の債権者より先に代金から回収できます。田中さんは競売まで土地に住み続けられます。
根拠: 民法 369条1項
抵当権の効力が及ぶ範囲と物上代位約2分
抵当不動産から生じる果実(家賃や収穫物など、物から生み出される収入や産物)には、返済が滞った後から効力が及びます。
根拠: 民法 371
担保の目的物が売れたり壊れたりして、持ち主が受け取るお金にも抵当権は及びます。これを物上代位といいます。建物が火事で焼けたときの火災保険金も、これにあたります。
根拠: 民法 372、民法 304条1項
ただし、物上代位をするには、受け取るお金が払い渡される前に差押えをしなければなりません。
根拠: 民法 304条1項
人物関係図物上代位は差押えが先
家賃が所有者に払い渡される前に、抵当権者が差し押さえる。
根拠: 民法 372、民法 304条1項
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払渡し・引渡しの前に、差押えをしないとできない。
間違えやすいところ:賃料債権が譲渡され、対抗要件が備わったあとでも、差押えをすれば物上代位できる(判例)
賃料への物上代位は、いつまでに何をすればよいか? 払渡し・引渡しの前に、差押えをしないとできない。
建物も一緒に競売できるが、優先権は土地の代価のみ。
間違えやすいところ:抵当権の効力は、抵当地の建物には及ばない(付加して一体となった物とは別)
抵当権設定後に土地に築造された建物は、どう扱われるか? 建物も一緒に競売できるが、優先権は土地の代価のみ。
物上代位は「払渡し・引渡しの前の差押え」が鍵です。利息は最後の2年分だけです。
根拠: 民法 304条1項、民法 375条1項
物上代位は、お金が支払われた後に主張するのでは間に合いません。払渡しの前に差し押さえます。
根拠: 民法 304条1項
抵当権の順位と処分約1分
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 抵当権の順位 | 同じ不動産に複数の抵当権が付いたとき、順位は登記の前後で決まります。先に登記した人が先に回収できます。 |
| 順位の変更 | 抵当権者どうしの合意で入れ替えられます。利害関係がある人がいれば、その承諾が要ります。変更は登記をしなければ効力を生じず、合意だけでは第三者に主張できません。 |
| 抵当権や順位の処分 | 自分の抵当権や順位を、他の債権の担保にできます。また、同じ債務者の他の債権者のために譲ったり放棄したりできます。主たる債務者に通知するか承諾を得なければ、債務者や保証人などに対抗できません。 |
根拠: 民法 373、民法 374条1項、民法 374条2項、民法 376条1項、民法 377条1項
銀行は自分の抵当権を、同じ田中さんに対する信用金庫の債権のために譲り渡しました。銀行が田中さんに通知していなければ、この譲渡を田中さんや保証人に対抗できません。
根拠: 民法 376条1項、民法 377条1項
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順位は登記の前後で決まる。変更は登記がないと効力を生じない。
間違えやすいところ:契約や設定の先後で決まると考えると間違える。変更も当事者の合意だけでは足りない
抵当権の順位は何で決まり、変更には何が要るか? 順位は登記の前後で決まる。変更は登記がないと効力を生じない。
法定地上権と共同抵当約3分
北町ホームの小林浩二さんが、競売に出ている土地を買おうか考えています。その土地の上には、土地と同じ持ち主の建物が建っています。「競売で土地を買ったら、建物を壊して更地にしてもらえますか」と小林さんは聞きました。木村健一さんは「土地と建物が同じ人のものだったなら、建物のために地上権が付いたものとみなされるんだ。土地の権利を失うと、建物を使い続ける根拠がなくなってしまうからね」と答えました。
根拠: 民法 388
田中さんが自分の土地と建物を持ち、土地に抵当権を付けました。競売で土地を小林さんが買い、建物は田中さんのままになりました。田中さんは法定地上権で土地を使い続けられます。地代は裁判所が定めます。抵当権を付けた後に田中さんが建物を売ったとします。競売で持ち主が分かれれば、建物を買った人のために法定地上権が成立します。
根拠: 民法 388
判定の流れ法定地上権は成立するか
成立すると、建物の所有者は地代を払って土地を使い続けられる。
根拠: 民法 388
1つの債権のために複数の不動産に抵当権を付けたときは、同時に競売すると各不動産の価額に応じて負担を分けます。1つだけ競売すると、その代金から全部を回収できます。
根拠: 民法 392条1項、民法 392条2項
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同一所有者の土地と建物が、競売で別の所有者になると成立する。
間違えやすいところ:共同抵当後の建物の再築や土地の共有では、原則として成立しない(判例)
法定地上権は、どんなときに成立するか? 同一所有者の土地と建物が、競売で別の所有者になると成立する。
抵当権消滅請求と代価弁済約1分
| 項目 | 抵当権消滅請求 | 代価弁済 |
|---|---|---|
| できる人 | 抵当不動産の第三取得者。主たる債務者や保証人、その承継人はできない。 | 抵当不動産について所有権や地上権を買い受けた第三者。 |
| 時期 | 競売による差押えの効力が生じる前にする。競売が始まってからでは間に合わない。 | 抵当権者の請求に応じて代価を弁済する。 |
| すると | すべての債権者が承諾し、提供した金額を払い渡すか供託すると、抵当権は消滅する。 | 代価を弁済すると、抵当権はその第三者のために消滅する。 |
根拠: 民法 379、民法 380、民法 382、民法 386、民法 378
田中さんから抵当権付きの土地を買った小林さんは、登記した債権者に書面を送り、代価を提供して抵当権消滅請求をしました。債権者が2か月以内に競売を申し立てなければ、小林さんの提供額を承諾したものとみなされます。
根拠: 民法 384条1項、民法 384条1項1号
時系列抵当権消滅請求の流れ
請求できるのは第三取得者だけ。債務者や保証人はできない。
根拠: 民法 382、民法 384条1項1号、民法 386
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第三取得者が、競売による差押えの効力が生じる前にできる。
間違えやすいところ:主たる債務者・保証人等は、消滅請求ができない
抵当権消滅請求は、だれが、いつまでにできるか? 第三取得者が、競売による差押えの効力が生じる前にできる。
抵当権と賃借権約3分
この節でよく出るのは
- ★ 2回抵当権に対抗できない賃借人は、競売で買受人が現れても、買受け…
中村翔さんが借りているアパートが、大家さんの借金のために競売にかけられることになりました。中村さんは競売の前から住んでいますが、借りたのは抵当権の登記より後です。「新しい持ち主に、すぐ出ていけと言われますか」と中村さんは心配しています。木村健一さんは「抵当権より後に借りた人は、買受人に賃借権を対抗できない。でも買受けから6か月は、明け渡さなくてよいんだ」と説明しました。
根拠: 民法 395条1項、民法 395条1項1号
競売前から建物を使っていた中村さんは、買受人小林さんの買受けから6か月は明渡しを求められません。ただし、小林さんが1か月分以上の支払を催告し、期間内に払わないときは猶予されません。
根拠: 民法 395条1項、民法 395条2項
占有されただけで、賃料相当額の損害を受けたとはいえません。損害の賠償を求めるには、実際に損なわれたことを示す必要があります。
根拠: 民法 370
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買受けの時から6か月間は、明渡しを要しない。
間違えやすいところ:対価の催告に応じない使用者には、明渡猶予の規定を適用しない
抵当権に劣後する賃借人は、競売後いつまで建物を使えるか? 買受けの時から6か月間は、明渡しを要しない。
明渡猶予の6か月は、誰にでも当然に認められるわけではありません。買受人が支払を催告して応じなければ猶予されません。
根拠: 民法 395条2項
根抵当権約2分
銀行との取引のように、借りたり返したりを繰り返す相手には、そのたびに抵当権を付け直すのは大変です。
根拠: 民法 398条の2第1項
そこで、一定の範囲の不特定の債権を、極度額の限度でまとめて担保する根抵当権が使われます。
根拠: 民法 398条の2第1項
担保する債権の範囲は、特定の継続的取引契約から生じるものなどに限定して定めなければなりません。
根拠: 民法 398条の2第2項
田中さんは銀行と継続的な取引契約を結び、土地に極度額5000万円の根抵当権を設定しました。田中さんが何度借りても、確定した元本と利息が5000万円まで担保されます。
根拠: 民法 398条の2第1項、民法 398条の3第1項
元本の確定期日は、定めたり変更したりできます。その期日は、定めた日から5年以内でなければなりません。
根拠: 民法 398条の6第1項、民法 398条の6第3項
元本が確定すると、確定した元本と利息などを、極度額を限度として行使できます。
根拠: 民法 398条の3第1項
根抵当権の設定から3年が過ぎたので、設定者である田中さんは元本の確定を請求しました。請求から2週間が過ぎると元本が確定します。根抵当権者である銀行は、いつでも確定を請求できます。
根拠: 民法 398条の19第1項、民法 398条の19第2項
根抵当権者が競売を申し立てたときなども、元本は確定します。
根拠: 民法 398条の20第1項
覚えるコマ
元本確定期日は5年以内。定めがなければ設定者は3年経過後に請求できる。
間違えやすいところ:確定前は、転抵当を除き、376条1項の処分ができない。極度額の限度で行使できる
根抵当権の元本確定期日と、確定請求の数字は? 元本確定期日は5年以内。定めがなければ設定者は3年経過後に請求できる。
極度額、元本確定期日は5年以内、設定から3年で確定請求。この3つが数字の要点です。
根拠: 民法 398条の2第1項、民法 398条の6第3項、民法 398条の19第1項
留置権・先取特権・質権約3分
この節でよく出るのは
- ★ 2回不動産質権者は、不動産を使い収益できますが、その代わりに管理…
根拠: 民法 295条1項、民法 303、民法 342、民法 369条1項
田中さんは修理屋に時計の修理を頼みました。修理屋は修理代をもらうまで、その時計を返さなくてよくなります。ただし修理代の支払期日がまだ来ていなければ、留置できません。
根拠: 民法 295条1項
留置権者は、債務者の承諾がなければ留置物を使ったり貸したり担保に入れたりできません。保存に必要な使用はできます。
根拠: 民法 298条2項
先取特権は、法律が定めた債権を持つ人が、債務者の財産から優先弁済を受ける権利です。当事者の合意では生まれません。債務者の総財産への先取特権は、共益の費用、雇用関係、子の監護の費用、葬式の費用、日用品の供給の債権にだけ生じます。
根拠: 民法 306、民法 303
不動産の工事をした請負人は、その工事代金について不動産の先取特権を持ちます。保存、工事、売買の順に優先します。
根拠: 民法 325、民法 325条1号、民法 325条2号、民法 325条3号、民法 331条1項
動産の先取特権は、目的の動産が第三者に引き渡された後は行使できません。
根拠: 民法 333
田中さんは質屋からお金を借り、時計を質に入れて質屋に渡しました。質屋は時計を占有している間、他の債権者に先立って弁済を受けられます。田中さんは自分で占有させておくことはできません。
根拠: 民法 344、民法 345
左右の比較抵当権と質権の違い
留置権は優先弁済を受けられない。先取特権は法律の定めで生まれる。
根拠: 民法 342、民法 344、民法 345、民法 369条1項
動産質は、継続して占有していなければ第三者に対抗できません。同じ動産の質権は設定の前後で順位が決まります。
根拠: 民法 352、民法 355条1項
不動産質権者は、不動産を使い収益できますが、その代わりに管理の費用を負担し、存続期間は10年を超えられません。
根拠: 民法 356、民法 360条1項
覚えるコマ
不動産質権は10年が上限。留置権の行使は時効の進行を妨げない。
間違えやすいところ:動産の先取特権は引渡し後は行使できない。登記した保存・工事の先取特権は抵当権に優先する
留置権・先取特権・質権で、取り違えやすい点は? 不動産質権は10年が上限。留置権の行使は時効の進行を妨げない。
まとめ
- 抵当権は、占有を移さずに、他の債権者に先立って弁済を受ける権利です。目的物の全部に及びます。
- 抵当権は被担保債権と同時でなければ時効で消滅せず、抵当権だけが先に消えることはありません。
- 物上代位は、払渡し・引渡しの前に差し押さえて行います。利息は満期となった最後の2年分だけです。
- 順位は登記の前後で決まり、順位の変更は登記がなければ効力を生じません。
- 法定地上権は、競売で土地と建物の所有者が別れたときに成立します。共同抵当後の再築では原則成立しません。
- 抵当権消滅請求は競売の差押えの前に第三取得者が行います。債務者や保証人はできません。
- 抵当権に対抗できない賃借人は、買受けから6か月は明渡しを要しません。同意の登記があれば対抗できます。
- 根抵当権は極度額の限度で不特定の債権を担保し、確定期日は5年以内、設定から3年で確定を請求できます。