権利関係

契約各論(売買・契約不適合責任・請負・委任・不法行為)

権利関係読む目安 約21分図 4場面つき

この単元で分かること

この単元のはじまりの場面

場面

田中大輔さん夫婦は、山本和子さんの家を買う契約をして、手付100万円を払いました。数日後、美咲さんが「もっといい家が見つかったので、やめられませんか」と言い出しました。木村健一さんは「相手が履行に着手する前なら、手付を放棄すれば解除できる。山本さんから解除するなら、手付の倍額を提供するんだ」と説明しました。手付の放棄や倍額の提供が、損害の清算を兼ねているからです。

契約はどのように成立するか約2分

過去問に出た

契約は、申込みと承諾が合致したときに成立します。書面がなくても成立します。意思表示は相手に届いた時から効力が生じるので、承諾の通知も、申込者に届いた時から効力を生じます。

根拠: 民法 522条1項、民法 97条1項

事例

山本さんが田中さんに「この土地を1000万円で売ります」と伝えました。田中さんが「買います」と答えると、その時に売買契約が成立します。契約書を作らなくても効力があります。

根拠: 民法 522条1項、民法 522条2項

承諾の期間を定めた申込みは、撤回できません。申込者が撤回する権利を留保していれば別です。

根拠: 民法 523条1項

期間内に承諾の通知が届かなければ、その申込みは効力を失います。遅れて届いた承諾は、新たな申込みとみなせます。

根拠: 民法 523条2項、民法 524

事例

山本さんは「1週間以内に返事をください」と申し込みました。8日目に田中さんから承諾が届いても、契約は成立しません。山本さんはこれを新たな申込みとして扱えます。

根拠: 民法 523条2項、民法 524

過去問に出た

申込者が死亡しても、効力を失う旨を表示していたときや、相手がその事実を知ったときでなければ、申込みは有効です。

根拠: 民法 526

過去問に出た

第三者のためにする契約では、第三者が債務者に直接給付を請求できます。成立時に第三者がいなくても構いません。

根拠: 民法 537条1項、民法 537条2項

事例

田中さんは山本さんと、田中さんの母に毎月10万円を送る契約を結びました。母が受け取る意思を表示すると、母は山本さんに直接請求できます。契約の成立時に母が同席していなくても問題ありません。

根拠: 民法 537条1項、民法 537条2項

第三者の権利は、第三者が利益を享受する意思を表示した時に発生します。その後は、当事者は変更も消滅もできません。

根拠: 民法 537条3項、民法 538条1項

要点過去問に出た

契約は合意だけで成立します。第三者のためにする契約では、第三者本人が請求できるようになります。

根拠: 民法 522条1項、民法 537条3項

ひっかけ

第三者の権利は、契約の時に自動で発生するのではありません。第三者が享受の意思を表示した時に発生します。

根拠: 民法 537条3項

売買の効力と引渡し約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 3回買主が他人の物だと知って契約しても、売主は取得して移転する義…

売買は、財産権を移転する約束と、代金を支払う約束で効力を生じます。

根拠: 民法 555

売主は、買主に登記などの対抗要件を備えさせる義務を負います。登記の申請に協力する義務です。

根拠: 民法 560

過去問に出た

他人の権利を売買の目的にしても、契約は有効です。売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負います。

根拠: 民法 561

事例

山本さんは田中さんに、山本さんの兄が持つ土地を売ると約束しました。この契約は有効です。山本さんは兄から土地を買い取って、田中さんに移転しなければなりません。できなければ損害賠償の責任を負います。

根拠: 民法 561

まだ引き渡されていない目的物から生じた果実は、売主に帰属します。買主は、引渡しの日から代金の利息を払います。

根拠: 民法 575条1項、民法 575条2項

事例

山本さんが田中さんに売った果樹園は、まだ引き渡されていません。引渡し前に実った果実は山本さんのものです。引渡し後は、田中さんが引渡しの日から代金の利息を負担します。

根拠: 民法 575条1項、民法 575条2項

表
場面代金を拒めるか
買主が権利を失うおそれがある売主が相当の担保を供するまで拒める
抵当権の登記がある不動産抵当権消滅請求の手続が終わるまで拒める
引渡し後に双方の責めに帰せない事由で滅失・損傷追完(契約に合うよう直すこと)・減額・解除ができず、代金も拒めない
適合物の履行を買主が拒んだ後の滅失引渡しと同じに扱う

根拠: 民法 576、民法 577条1項、民法 567条1項、民法 567条2項

★ 過去問で3回

買主が他人の物だと知って契約しても、売主は取得して移転する義務を負います。買主の善意・悪意は問いません。

根拠: 民法 561

代金の支払が遅れたときの遅延損害金は、約定利率がなければ法定利率です。法定利率は年3%を基準に、3年ごとに見直されます。

根拠: 民法 404条2項、民法 404条3項、民法 419条1項

要点

売主の義務は、対抗要件を備えさせることと、権利を移転することです。危険は引渡しで買主に移ります。

根拠: 民法 560、民法 567条1項

ひっかけ過去問に出た

他人の権利の売買は無効ではありません。契約は有効で、売主が取得して移転する義務を負います。

根拠: 民法 561

手付と手付による解除約2分

売買では、買主が売主に手付を交付することがあります。手付は、解除のための権利として働きます。

根拠: 民法 557条1項

買主は手付を放棄すれば、売主は倍額を現実に提供すれば、契約を解除できます。これを手付解除(手付を捨てて解除する仕組み)といいます。

根拠: 民法 557条1項

事例

田中さんが山本さんに土地を買う約束をし、手付100万円を渡しました。田中さんは100万円を捨てれば解除できます。田中さんが約束を反故にするなら、山本さんが200万円を提供して解除できます。

根拠: 民法 557条1項

時系列手付で解除できる間

契約の時買主が手付100万円を渡す着手の前買主は手付を放棄して解除着手の前売主は倍額を提供して解除着手の後相手が着手したら解除できない解除可

履行の着手は、外部から認識できる履行行為の一部や、履行に欠かせない前提行為。

根拠: 民法 557条1項

相手方が契約の履行に着手した後は、手付による解除はできません。

根拠: 民法 557条1項

履行の着手とは、外部から認識できる履行行為の一部や、履行に欠かせない前提行為をした場合をいいます。

根拠: 民法 557条1項

事例

山本さんが土地の引渡しに向けて測量や登記の準備を始めたら、履行に着手したことになります。その後は、田中さんは手付を捨てても解除できません。

根拠: 民法 557条1項

過去問に出た

手付による解除では、損害賠償の請求を妨げないという規定は適用されません。手付の放棄や倍額の提供が、損害の清算を兼ねているからです。

根拠: 民法 557条2項

覚えるコマ

覚える手付で解除するとき、買主と売主はそれぞれ何をするか?根拠 557条1項
買主から解除・手付を放棄する売主から解除・手付の倍額を、現実に提供する相手方が契約の履行に着手した後は、解除できない。

買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供する。

間違えやすいところ:相手方が履行に着手した後は、手付による解除はできない

手付で解除するとき、買主と売主はそれぞれ何をするか? 買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供する。

要点

手付解除ができるのは、履行着手までです。手付の放棄か倍額が、損害賠償の代わりになります。

根拠: 民法 557条1項、民法 557条2項

ひっかけ

手付による解除は、損害賠償とは別に請求できる、ではありません。手付解除には損害賠償の規定が適用されません。

根拠: 民法 557条2項

契約不適合責任約3分

この節でよく出るのは

  • ★ 2回引渡しから半年後、田中大輔さんは、家の屋根から雨もりがしてい…
  • ★ 2回種類や品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に通知しなけ…
場面★ 過去問で2回

引渡しから半年後、田中大輔さんは、家の屋根から雨もりがしていることに気づきました。「売主の山本さんに言えるのでしょうか」と田中さんは心配しています。木村健一さんは「契約の内容に合わない物を渡されたら、買主は修理や代金の減額などを求められる。ただし、種類や品質の不適合は、知った時から1年以内に通知しないといけないんだ」と答えました。

根拠: 民法 562条1項、民法 566

過去問に出た

引き渡された物が契約の内容に合わないときは、買主は売主に履行の追完を請求できます。修補や代替物の引渡しです。

根拠: 民法 562条1項

不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、追完を請求できません。

根拠: 民法 562条2項

事例

田中さんが山本さんから買った機械に不具合がありました。田中さんは山本さんに修理を求められますが、田中さんの使い方が原因なら、追完は請求できません。

根拠: 民法 562条1項、民法 562条2項

買主が相当の期間を定めて追完を催告し、期間内に追完がなければ、不適合の程度に応じて代金を減額できます。

根拠: 民法 563条1項

表
請求要件
履行の追完不適合が買主の責めによるものでないこと
代金の減額相当期間を定めた追完の催告と、期間内の不追完
損害賠償・解除債務不履行の要件による
通知種類・品質の不適合は知った時から1年以内

根拠: 民法 562条1項、民法 563条1項、民法 564、民法 566

過去問に出た

追完や減額の規定は、損害賠償の請求や法定の解除権の行使を妨げません。

根拠: 民法 564

契約不適合による損害賠償は、債務者の責めに帰せない事由のときは請求できません。

根拠: 民法 564、民法 566

★ 過去問で2回

種類や品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に通知しなければ、追完や減額、損害賠償、解除ができません。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失(著しい注意不足)で知らなかったときは、制限はありません。

根拠: 民法 566

事例

田中さんは山本さんから買った土地の地盤が弱いと引き渡し後に知りました。知ってから1年以内に山本さんへ通知しなければ、その不適合を理由にした請求ができなくなります。数量の不足にはこの期間の制限はありません。

根拠: 民法 566

時系列種類・品質の不適合の通知

引渡し物を引き渡す知った時不適合に気づく1年以内売主に不適合を通知する1年を過ぎる追完・減額・賠償・解除ができない1年

通知の期間は、不適合を知った時から数える。

根拠: 民法 566

過去問に出た

担保責任を負わない特約があっても、全てを免れるわけではありません。売主が知りながら告げなかった事実や、自ら設定した第三者の権利には責任が残ります。

根拠: 民法 572

売主に責めがなくても、買主は追完・減額・解除ができます。損害賠償だけは、売主の責めに帰せない事由のときはできません。

根拠: 民法 562条2項、民法 563条3項、民法 543、民法 564

過去問に出た

債務の全部が履行不能のときや、売主が全部の履行を明確に拒んだときは、催告なしで直ちに解除できます。

根拠: 民法 542条1項、民法 542条1項1号、民法 542条1項2号

通知をした後も、請求権は債権の消滅時効にかかります。権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年です。

根拠: 民法 166条1項1号、民法 166条1項2号

契約不適合の責任を負うのは売主です。売買を媒介しただけの業者は当事者でないので、この責任を負いません。

根拠: 民法 562条1項

過去問に出た

追完が不能なときや、売主が追完を明確に拒んだときは、催告なしで直ちに代金を減額できます。

根拠: 民法 563条2項、民法 563条2項1号、民法 563条2項2号

覚えるコマ

覚える契約不適合を知った買主は、いつまでに通知が要るか?根拠 566条
追完請求買主の責めに帰すべき事由がないこと代金減額相当期間を定めた追完の催告と、期間内の不追完損害賠償・解除債務不履行の要件(帰責事由など)による通知期間種類・品質の不適合は、知った時から1年以内(売主が悪意・重過失なら制限なし)

種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に通知する。

間違えやすいところ:数量の不適合には、「知った時から1年以内の通知」の期間制限はない(運用)

契約不適合を知った買主は、いつまでに通知が要るか? 種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に通知する。

覚える代金の減額を請求するには、先に何をするか?根拠 563条1項
追完を請求する相当期間を定めて催告する期間内に追完がない不適合の程度に応じ、代金を減額できる不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完を請求できない。

原則として、相当期間を定めた追完の催告が要る。

間違えやすいところ:追完や代金減額をしても、損害賠償の請求や法定解除権の行使は妨げられない

代金の減額を請求するには、先に何をするか? 原則として、相当期間を定めた追完の催告が要る。

要点

追完・減額・損害賠償・解除の4つがあります。種類と品質の不適合には1年の通知期間があります。

根拠: 民法 562条1項、民法 563条1項、民法 564、民法 566

ひっかけ

代金の減額は、催告しなくてもいつでもできる、ではありません。原則として相当期間の催告が必要です。

根拠: 民法 563条1項

贈与と使用貸借約2分

贈与は、無償で与える意思表示と受諾で効力を生じます。書面や引渡しは成立の条件ではありません。

根拠: 民法 549

過去問に出た

書面によらない贈与は、履行の終わった部分を除き、各当事者が解除できます。軽率な約束を縛らないためです。

根拠: 民法 550

事例

山本さんは田中さんに現金を贈ると口約束し、まだ渡していません。山本さんも田中さんもこの贈与を解除できます。すでに渡した分は解除できません。

根拠: 民法 550

過去問に出た

贈与者は、目的として特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定されます。負担付贈与では、負担の限度で売主と同じ担保の責任を負います。

根拠: 民法 551条1項、民法 551条2項

過去問に出た

定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡で効力を失います。負担付贈与には双務契約の規定が準用され、死因贈与(死後に贈る約束)には遺贈の規定が準用されます。

根拠: 民法 552、民法 553、民法 554

過去問に出た

使用貸借は、無償で借りる契約です。書面がなくても成立します。

根拠: 民法 593

事例

山本さんは友人である田中さんに車を無償で貸しました。田中さんは山本さんの承諾がなければ、第三者にその車を使わせられません。田中さんが死亡すると使用貸借は終了し、相続されません。

根拠: 民法 594条2項、民法 597条3項

借主は、借用物の通常の必要費を負担します。貸主に請求はできません。

根拠: 民法 595条1項

期間も使用収益の目的も定めないときは、貸主はいつでも解除できます。借主もいつでも解除できます。

根拠: 民法 598条2項

借主の用法違反による損害の賠償は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求します。

根拠: 民法 600条1項

覚えるコマ

覚える書面によらない贈与は、解除できるか?根拠 550条
書面によらない贈与・各当事者が解除できる・履行の終わった部分は除く負担付贈与・贈与者は、負担の限度で売主と同じ担保責任・双務契約の規定を準用贈与は、意思表示と受諾で効力を生じる。引渡しは要件ではない。

履行の終わった部分を除き、各当事者が解除できる。

間違えやすいところ:負担付贈与の贈与者は、負担の限度で売主と同じ担保責任を負う

書面によらない贈与は、解除できるか? 履行の終わった部分を除き、各当事者が解除できる。

要点

贈与は無償の契約、使用貸借も無償の契約です。どちらも書面がなくても成立します。

根拠: 民法 549、民法 593

ひっかけ過去問に出た

使用貸借は借主の死亡で終了し、相続されません。賃貸借とは違う点です。

根拠: 民法 597条3項

請負と委任約3分

この節でよく出るのは

  • ★ 3回請負の不適合も、注文者が知った時から1年以内に通知しないと、…
  • ★ 2回委任は、委任者または受任者の死亡で終了します。受任者が後見開…

請負は、仕事の完成と、その結果に対する報酬の約束で効力を生じます。

根拠: 民法 632

報酬は、目的物の引渡しと同時に支払います。引渡しを要しない仕事では、別の決まりを準用します。

根拠: 民法 633

可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときは、その部分を完成とみなし、利益の割合に応じた報酬を請求できます。

根拠: 民法 634

事例

田中さんは大野さんに3棟の倉庫の建築を頼み、2棟が完成したところで契約が解除されました。田中さんがその2棟を使えるなら、大野さんはその割合に応じた報酬を請求できます。

根拠: 民法 634

注文者が供した材料や指図で生じた不適合は、注文者は請求できません。請負人が不適当と知りながら告げなかったときは別です。

根拠: 民法 636

★ 過去問で3回

請負の不適合も、注文者が知った時から1年以内に通知しないと、追完・減額・損害賠償・解除ができません。

根拠: 民法 637条1項

過去問に出た

引渡しの時に請負人が不適合を知っていたときは、この1年の通知期間の制限はありません。重過失(著しい注意不足)で知らなかったときも同じです。

根拠: 民法 637条2項

過去問に出た

請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できます。

根拠: 民法 641

事例

田中さんは大野さんに建物の建築を頼みましたが、完成前に方針が変わりました。田中さんは大野さんに損害を賠償すれば、いつでも契約を解除できます。

根拠: 民法 641

受任者は、報酬があるかどうかにかかわらず、善良な管理者の注意をもって事務を処理します。委任者のために取得した権利は委任者に移転します。

根拠: 民法 644、民法 646条2項

受任者は、特約がなければ報酬を請求できません。報酬の約がある委任が中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて請求できます。

根拠: 民法 648条1項、民法 648条3項

事例

山本さんはみなと不動産に土地の売却の交渉を委任し、報酬を約束しました。途中で事情が変わり終了しましたが、みなと不動産は交渉を進めた分に応じて報酬を請求できます。

根拠: 民法 648条3項

受任者は、必要と認められる費用と、支出の日以後の利息の償還を請求できます。

根拠: 民法 650条1項

過去問に出た

委任は、各当事者がいつでも解除できます。相手に不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由がないかぎり損害を賠償します。

根拠: 民法 651条1項、民法 651条2項

★ 過去問で2回

委任は、委任者または受任者の死亡で終了します。受任者が後見開始の審判を受けたときも終了します。

根拠: 民法 653、民法 653条1号、民法 653条3号

注文者の責めで仕事ができなくなったときは、請負人は報酬の全額を請求できます。ただし、債務を免れて得た利益は注文者に償還します。

根拠: 民法 536条2項

覚えるコマ

覚える請負の不適合は、いつまでに通知が要るか?根拠 637条1項
通知期間注文者が知った時から1年以内に通知する例外請負人が引渡しの時に不適合を知り又は重過失なら、制限なし解除仕事が完成しない間は、注文者がいつでも損害を賠償して解除

注文者が知った時から1年以内。請負人が悪意・重過失なら制限なし。

間違えやすいところ:注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも損害を賠償して解除できる

請負の不適合は、いつまでに通知が要るか? 注文者が知った時から1年以内。請負人が悪意・重過失なら制限なし。

覚える委任は、どんなときに終了するか?根拠 653条1号
終了する・委任者又は受任者の死亡・受任者が後見開始の審判を受けたとき解除・各当事者がいつでもできる・相手方に不利な時期は、やむを得ない事由がなければ損害賠償

当事者の死亡や、受任者の後見開始の審判で終了する。

間違えやすいところ:解除は各当事者がいつでもできるが、相手方に不利な時期なら損害を賠償する

委任は、どんなときに終了するか? 当事者の死亡や、受任者の後見開始の審判で終了する。

要点

請負は仕事の完成への報酬、委任は事務処理の委託です。請負には不適合の1年の通知期間があり、請負も委任も解除の決まりがあります。

根拠: 民法 632、民法 643、民法 637条1項

ひっかけ過去問に出た

委任は受任者の死亡でも終了します。委任者の死亡だけで終わる、ではありません。

根拠: 民法 653条1号

事務管理と不当利得約2分

頼まれていないのに他人のために事務を始めることを事務管理といいます。管理者は本人の利益に最も合う方法で行います。

根拠: 民法 697条2項

管理者は、本人の意思を知っているときや推知できるときは、その意思に従って事務管理をしなければなりません。

根拠: 民法 697条2項

事例

田中さんは留守中の隣家である山本さんの水道管の破裂を見つけ、山本さんの意向に沿って修理業者を手配しました。田中さんは本人の利益に合う方法で行う必要があります。

根拠: 民法 697条2項

過去問に出た

急迫の危害を免れさせるための事務管理では、悪意や重大な過失がなければ、生じた損害の賠償責任を負いません。

根拠: 民法 698

法律上の原因なく利益を得て、他人に損失を与えた人は、その利益を返還します。これを不当利得(理由なく得た利益)といいます。

根拠: 民法 703

表
場面返還・償還の範囲
事務管理・有益な費用その費用の償還を請求できる
事務管理・本人の意思に反する本人が現に利益を受けている限度で償還できる
不当利得・善意の受益者利益の存する限度で返還すれば足りる
不当利得・悪意の受益者受けた利益に利息を付けて返還し、損害も賠償する

根拠: 民法 702条1項、民法 702条3項、民法 703、民法 704

事例

山本さんが善意で田中さんの土地の一部に建物を建てて利益を受けました。山本さんは、その利益が現に残っている限度で返還すれば足ります。山本さんが悪意なら、利息を付して返還し、損害も賠償します。

根拠: 民法 703、民法 704

債務がないことを知って弁済した人は、給付したものの返還を請求できません。不法な原因で給付した人も、原因が受益者だけにあるときを除き、返還を請求できません。

根拠: 民法 705、民法 708

要点過去問に出た

事務管理は費用の償還、不当利得は利益の返還です。どちらも本人や受益者の善意・悪意で範囲が変わります。

根拠: 民法 702条1項、民法 703

ひっかけ

悪意の受益者は、利益の存する限度ではなく、受けた利益に利息を付けて返還します。

根拠: 民法 704

不法行為(だれが責任を負うか)約3分

場面

大野誠社長が「従業員が車で案内中に他人の車にぶつけたら、会社も賠償するのかな」と木村さんに聞きました。木村健一さんは「従業員が事業の執行について加えた損害は、使用者(従業員を使う人)も賠償する責任を負うんだ」と説明しました。佐藤さくらさんは、仕事で運転する自分を思い浮かべて、メモを取りました。

根拠: 民法 715条1項

故意または過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害すると、損害を賠償する責任を負います。

根拠: 民法 709

身体・自由・名誉の侵害でも、財産権の侵害でも、財産以外の損害を賠償します。

根拠: 民法 710

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者、子に対しては、財産権の侵害がなくても賠償します。

根拠: 民法 711

事例

田中さんが交通事故で山本さんを死亡させました。山本さんの両親は、自分たちの財産が侵害されていなくても、田中さんに損害の賠償を請求できます。

根拠: 民法 711

表
場面責任を負う者免れる場合
責任無能力者の行為監督義務者監督の義務を怠らなかったとき
被用者の事業執行使用者選任・監督に相当の注意をしたとき
請負人の仕事原則として注文者は負わない注文・指図に過失があるとき
土地の工作物まず占有者、次に所有者占有者が必要な注意をしたとき

根拠: 民法 712、民法 713、民法 714条1項、民法 715条1項、民法 716、民法 717条1項

未成年者は、自分の行為の責任を弁識するのに足りる知能がなければ、賠償の責任を負いません。

根拠: 民法 712

責任を負わない未成年者や精神障害者を監督する義務がある人は、その人が第三者に加えた損害を賠償します。

根拠: 民法 714条1項

事業のために他人を使う人は、被用者が事業の執行について加えた損害を賠償します。

根拠: 民法 715条1項

事例

みなと不動産の従業員である佐藤さんが配送中に田中さんへ衝突しました。佐藤さんの行為が外形上職務の範囲に見えるなら、みなと不動産が田中さんに賠償の責任を負います。みなと不動産は佐藤さんに求償できますが、信義則上、損害の一部にとどまることがあります。

根拠: 民法 715条1項、民法 715条3項

請負人が仕事について加えた損害は、注文や指図に過失がないかぎり、注文者は賠償しません。

根拠: 民法 716

過去問に出た

土地の工作物の設置や保存の瑕疵による損害は、まず占有者が賠償します。占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償します。

根拠: 民法 717条1項

判定の流れ土地の工作物の損害はだれが賠償するか

占有者は必要な注意をしたか?はい所有者が賠償するいいえ占有者が賠償する

設置や保存に瑕疵のある土地の工作物で損害が出たとき。まず占有者が責任を負う。

根拠: 民法 717条1項

損害の原因について他に責任を負う者があるときは、占有者や所有者は求償できます。

根拠: 民法 717条3項

過去問に出た

数人が共同の不法行為をしたときは、各自が連帯して全部を賠償します。教唆した者や幇助した者も共同行為者とみなされます。

根拠: 民法 719条1項、民法 719条2項

過去問に出た

被用者が先に第三者へ賠償したときも、使用者が負担すべき範囲では、使用者に求償できる場合があります。

根拠: 判例 最判 令和2年2月28日

覚えるコマ

覚える不法行為の責任を負うのは、場面ごとにだれか?根拠 717条1項
責任無能力者監督義務者(監督を怠らなかったときは免れる)被用者の事業執行使用者(選任・監督に注意したときは免れる)請負人の仕事原則として注文者は負わない土地の工作物まず占有者。必要な注意をしたときは所有者

責任無能力者は監督義務者、被用者は使用者、工作物はまず占有者。

間違えやすいところ:請負人が仕事で加えた損害は、注文・指図に過失がない限り注文者は賠償しない

不法行為の責任を負うのは、場面ごとにだれか? 責任無能力者は監督義務者、被用者は使用者、工作物はまず占有者。

要点

責任を負う者は場面ごとに違います。使用者は外形上職務に見えれば責任を負い、注文者は原則として負いません。

根拠: 民法 714条1項、民法 715条1項、民法 716、民法 717条1項

ひっかけ

被用者が勝手にやったことでも、外形上職務の範囲に見えれば使用者が責任を負います。実際に職務だったかは問いません。

根拠: 民法 715条1項

不法行為の賠償範囲と時効約2分

この節でよく出るのは

  • ★ 3回不法行為の時効は3年、生命・身体なら5年、いずれも不法行為の…
  • ★ 2回不法行為による損害賠償の請求権は、損害と加害者を知った時から…
  • ★ 2回人の生命や身体を害する不法行為の場合は、損害と加害者を知った…

被害者に過失があったときは、裁判所はそれを考慮して賠償の額を定められます。これを過失相殺といいます。

根拠: 民法 722条2項

胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなされます。

根拠: 民法 721

事例

田中さんの事故で山本さんが死亡し、山本さんの妻は妊娠していました。生まれてきた子は、損害賠償の請求権について既に生まれたものとして扱われます。

根拠: 民法 721

★ 過去問で2回

不法行為による損害賠償の請求権は、損害と加害者を知った時から3年で時効によって消滅します。

根拠: 民法 724条1項1号

★ 過去問で2回

人の生命や身体を害する不法行為の場合は、損害と加害者を知った時から5年に延びます。

根拠: 民法 724条の2

★ 過去問で2回

どちらの場合も、不法行為の時から20年たつと請求権は消滅します。

根拠: 民法 724条1項2号

数字の比べ不法行為の損害賠償の時効

通常損害と加害者を知った時3年生命・身体損害と加害者を知った時5年行為の時からどちらの場合も20年

3年・5年は損害と加害者を知った時から数える。20年は不法行為の時から。

根拠: 民法 724条1項1号、民法 724条の2、民法 724条1項2号

事例

田中さんが山本さんにけがをさせました。山本さんは、損害と加害者が田中さんだと現実に認識した時から5年、賠償を請求できます。物が壊れただけなら3年です。

根拠: 民法 724条1項1号、民法 724条の2

過去問に出た

損害を知った時とは、損害の発生を現実に認識した時です。加害者を知っていても、損害の発生を認識していなければ時効は進みません。

根拠: 民法 724条1項1号

他人の不法行為に対するやむを得ない防衛行為は、損害賠償の責任を負いません。他人の物から生じた急迫の危難を避けるため、その物を損傷した場合も同じです。

根拠: 民法 720条1項、民法 720条2項

過去問に出た

私人が実力で権利を実現する自力救済は、原則として許されず不法行為になると考えられています。

根拠: 民法 720条1項

覚えるコマ

覚える不法行為の損害賠償請求権の時効は、何年か?根拠 724条1号
損害と加害者を知った時から3年生命・身体の場合は、知った時から5年不法行為の時から20年「知った時」とは、損害の発生を現実に認識した時(判例)。

知った時から3年(生命・身体は5年)、不法行為の時から20年。

間違えやすいところ:3年と5年(生命・身体)の取り違え。起算点は、損害及び加害者を知った時

不法行為の損害賠償請求権の時効は、何年か? 知った時から3年(生命・身体は5年)、不法行為の時から20年。

要点★ 過去問で3回

不法行為の時効は3年、生命・身体なら5年、いずれも不法行為の時から20年です。

根拠: 民法 724条1項1号、民法 724条の2、民法 724条1項2号

ひっかけ★ 過去問で2回

3年・5年の起算点は「損害と加害者を知った時」です。加害者を知っただけでは時効は進みません。

根拠: 民法 724条1項1号

本試験ではこう出ます

本試験では「AがBに土地を売り、BがAに手付を交付した」のように出ます。相手が履行に着手した後か、手付の放棄か倍額の提供かを読み取ります。

根拠: 民法 557条1項

まとめ

  • 契約は申込みと承諾の合致で成立し、書面は原則として要りません。
  • 第三者のためにする契約では、第三者が享受の意思を表示した時に権利が発生します。
  • 他人の権利の売買も有効で、売主は取得して移転する義務を負います。危険は引渡しで買主に移ります。
  • 手付解除は買主の放棄か売主の倍額で行い、相手が履行に着手した後はできません。
  • 契約不適合では追完・減額・損害賠償・解除が使え、種類と品質は知った時から1年の通知が必要です。
  • 贈与と使用貸借は無償の契約で、書面がなくても成立します。使用貸借は借主の死亡で終了します。
  • 請負の報酬は引渡しと同時、委任は特約がなければ報酬を請求できません。請負は注文者が完成前に損害を賠償して、委任は各当事者がいつでも解除できます。
  • 不法行為では、使用者・監督義務者・占有者など、責任を負う者が場面ごとに違います。時効は3年(生命・身体は5年)と20年です。
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