禁止行為・その他業務規制(帳簿・従業者名簿・標識)
この単元で分かること
この単元のはじまりの場面
秋、みなと不動産は、新築の建売を自分で売り出すことになりました。見学会の日、佐藤さくらさんは、迷っている田中大輔さんに「この辺りは必ず値上がりしますよ」と言いかけました。木村健一さんはすぐに止めました。「利益は確実だと勧誘で言うのは、会社だけでなく、社員のきみも禁止なんだ」と教えました。佐藤さんは、駅までの距離や周りの環境など、確かな事実だけを話し直しました。
禁止行為の全体像約1分
この節でよく出るのは
- ★ 3回うその告知、不当に高い報酬の要求、手付の貸付けによる誘引など…
宅地建物取引業者(宅建業者)の業務には、してはいけない行為が並んでいます。これを禁止行為といいます。
根拠: 宅地建物取引業法 47条
これとは別に、断定的な判断を伝えることや、相手をおどすことも禁止されています。こちらは宅建業者だけでなく、従業者も名宛人です。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第1項、宅地建物取引業法 47条の2第2項
みなと不動産の佐藤さんが、田中さんにこの土地は必ず値上がりします、と伝えました。これは断定的判断の提供で、禁止行為です。みなと不動産だけでなく、佐藤さんも名宛人です。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第1項
名宛人は規定によって違います。宅建業者だけのものと、従業者も含むものがあります。
根拠: 宅地建物取引業法 47条、宅地建物取引業法 47条の2第1項
うその告知と、告げないことの禁止約1分
宅建業者は、勧誘のときや、撤回・解除を妨げるときに、故意にうそのことを告げてはいけません。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号
故意に事実を告げないことも、同じく禁止です。黙って伝えないだけでも違反になります。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号
対象は、重要事項説明の事項、供託所等の説明の事項、契約後の書面の事項です。当事者の氏名と住所だけが除かれます。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号
そのほか、物件の所在や価額、宅建業者の資力や信用など、相手の判断に重要な影響を与える事項も対象です。人の死は、国土交通省のガイドラインがあります。特殊清掃等が行われていない自然死や、日常生活の中の不慮の死は、原則として告げなくてかまいません。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号、宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(国土交通省・令和3年10月) 3(1)①
相手が実際に誤認したことまでは、要件ではありません。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号
みなと不動産の佐藤さんが、土地に土砂災害の危険があることを知っていて、田中さんに告げませんでした。これは故意に事実を告げない行為で、禁止行為です。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号
覚えるコマ
故意の不実告知も、告げないことも禁止。相手が業者でも適用される。
間違えやすいところ:相手がだまされなくても当たる。37条の事項のうち、当事者の氏名・住所は対象外
うその告知や、告げないことの禁止は、どこまで及ぶか? 故意の不実告知も、告げないことも禁止。相手が業者でも適用される。
うそを言うことと、黙っていることの両方が禁止です。除かれるのは当事者の氏名と住所だけです。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号
相手が気づかなければ違反にならない、は誤りです。誤認があったかどうかは要件ではありません。
根拠: 宅地建物取引業法 47条1号
不当に高い報酬と、手付の貸付け約1分
宅建業者は、不当に高額の報酬を要求してはいけません。受け取っていなくても、要求した時点で違反です。
根拠: 宅地建物取引業法 47条2号
手付金の支払を猶予することも、信用の供与に当たると考えられています。
根拠: 宅地建物取引業法 47条3号
判定の流れ手付の信用の供与
手付金の支払の猶予も、信用の供与に当たる。
根拠: 宅地建物取引業法 47条3号
覚えるコマ
不当に高額の報酬の要求と、手付の貸付けなど信用の供与が禁止。
間違えやすいところ:報酬は受け取っていなくても、要求した時点で当たる。手付以外の貸付けは当たらない
報酬と手付で、禁止される行為は何か? 不当に高額の報酬の要求と、手付の貸付けなど信用の供与が禁止。
断定的判断の提供と威迫約1分
宅建業者や従業者は、契約の勧誘で、利益が確実だと誤解させる断定的判断を伝えてはいけません。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第1項
契約を結ばせるため、または撤回や解除を妨げるため、相手をおどすことも禁止です。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第2項
この規定の名宛人には、宅建業者の代理人や使用人、その他の従業者も含まれます。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第1項
人物関係図断定的判断を禁じられる人
断定的判断の提供を禁じられるのは、宅建業者と、その従業者の両方。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第1項
みなと不動産の佐藤さんが、田中さんに必ず値上がりすると言いました。断定的判断の提供で、禁止行為です。従業者である佐藤さん自身も名宛人です。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第1項
覚えるコマ
業者のほか、代理人・使用人その他の従業者。売買に限らず貸借も含む。
間違えやすいところ:47条の各号の名宛人は、宅地建物取引業者だけ
断定的判断の提供と威迫は、だれに禁止されているか? 業者のほか、代理人・使用人その他の従業者。売買に限らず貸借も含む。
勧誘の適正約1分
この節でよく出るのは
- ★ 3回将来の環境や交通の利便について、誤解させる断定的判断は禁止で…
- ★ 3回撤回のときに預り金の返還を拒むことや、手付を放棄した解除を正…
- ★ 2回勧誘の前に、宅建業者の商号、勧誘する人の氏名、勧誘の目的を告…
断定的判断のほかにも、勧誘の仕方に細かい決まりがあります。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 16条の11
将来の環境や交通の利便について、誤解させる断定的判断は禁止です。正当な理由なく、相手に判断の必要な時間を与えないことも禁止です。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 16条の11第1号
勧誘の前に、宅建業者の商号、勧誘する人の氏名、勧誘の目的を告げます。勧誘を続けてほしくないと言われたら、続けてはいけません。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 16条の11第1号
迷惑な時間の電話や訪問、深夜や長時間の勧誘で相手を困惑させることも、禁止です。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 16条の11第1号
撤回のときに預り金の返還を拒むことや、手付を放棄した解除を正当な理由なく拒むことも、禁止です。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 16条の11第2号、宅地建物取引業法施行規則 16条の11第3号
みなと不動産の佐藤さんが、夜遅くに田中さんへ何度も電話しました。これは迷惑を覚えさせる時間の電話で、禁止行為です。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 16条の11第1号
覚えるコマ
意思表示の後の勧誘継続や、迷惑な時間の電話・訪問は禁止。
間違えやすいところ:勧誘の前に、商号・勧誘者の氏名・勧誘の目的を告げることも求められる
勧誘で、してはいけないことは何か? 意思表示の後の勧誘継続や、迷惑な時間の電話・訪問は禁止。
不当な履行遅延と、秘密を守る義務約2分
この節でよく出るのは
- ★ 2回宅建業者は、正当な理由がなければ、業務で知った秘密を漏らして…
正当な理由があれば、遅延しても禁止には当たりません。
根拠: 宅地建物取引業法 44条
宅建業者は、正当な理由がなければ、業務で知った秘密を漏らしてはいけません。業をやめた後も、同じです。
根拠: 宅地建物取引業法 45条
従業者も、業務を補助して知った秘密を漏らしてはいけません。補助とは、仕事を手伝うことです。従業者でなくなった後も、同じです。
根拠: 宅地建物取引業法 75条の3
覚えるコマ
業者も従業者も、業をやめた後・辞めた後でも義務が続く。
間違えやすいところ:従業者の義務は、75条の3が定める
秘密を守る義務は、いつまで続くか? 業者も従業者も、業をやめた後・辞めた後でも義務が続く。
履行遅延は不当にであることが条件です。秘密保持は、業をやめた後も続きます。
根拠: 宅地建物取引業法 44条、宅地建物取引業法 45条
秘密保持の義務は、業をやめれば終わる、は誤りです。やめた後も続きます。
根拠: 宅地建物取引業法 45条
「正当な理由」にあたるのは、たとえば、次のようなときです。裁判で証人として証言を求められたときや、税務署などの職員から法律にもとづく質問を受けたときです。依頼者本人が承諾しているときも、守秘義務の対象外です。
根拠: 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第45条関係
売主が「秘密にしてほしい」と望んでも、告げなければならないことがあります。重要事項の説明のように、相手方に告げることが法律上の義務になっている事柄です。
根拠: 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第45条関係
依頼者が承諾しても、秘密は漏らせない、は誤りです。本人の承諾があれば、守秘義務の対象外です。
根拠: 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第45条関係
取消しの制限約1分
個人の宅建業者で、未成年者でない人の業務上の行為は、行為能力の制限では取り消せません。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の3
未成年者である宅建業者の行為は、行為能力を理由に取り消せます。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の3
覚えるコマ
未成年者を除く個人の業者は取り消せない。未成年者の業者は取り消せる。
間違えやすいところ:取消しが制限されるのは、宅建業の業務に関し行った行為だけ
業者の業務上の行為は、行為能力の制限を理由に取り消せるか? 未成年者を除く個人の業者は取り消せない。未成年者の業者は取り消せる。
成年の個人の宅建業者は、行為能力を理由に取り消せません。未成年の宅建業者は取り消せます。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の3
宅建業者の行為は、だれでも行為能力を理由に取り消せる、は誤りです。成年の個人の宅建業者は取り消せません。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の3
従業者証明書と従業者名簿約1分
見学会の朝、佐藤さんは従業者証明書を机に置いたまま、現地へ向かおうとしました。従業者証明書とは、従業者であることを示す身分証のようなものです。木村さんは「証明書を持たせずに、社員を仕事に出してはいけないんだ」と呼び止めました。取引の関係者から求められたら、その場で示す決まりです。佐藤さんは、事務所へ取りに戻りました。
根拠: 宅地建物取引業法 48条1項、宅地建物取引業法 48条2項
| だれが | いつ・どんなとき | 何をする |
|---|---|---|
| 宅建業者 | いつも(非常勤の役員にも) | 従業者に証明書を携帯させる |
| 宅建業者 | 携帯させないときは | その人を業務に従事させてはいけない |
| 従業者 | 取引の関係者から請求があったとき | 証明書を提示する(提示の義務は従業者) |
| 宅建業者 | 事務所ごとに | 従業者名簿を備え、全員の氏名・証明書の番号・主たる職務内容などを記載する |
| 宅建業者 | 請求があったとき | 従業者名簿を閲覧に供する |
| 宅建業者 | 最終の記載から10年 | 従業者名簿を保存する |
根拠: 宅地建物取引業法 48条1項、宅地建物取引業法 48条2項、宅地建物取引業法 48条3項、宅地建物取引業法 48条4項、宅地建物取引業法施行規則 17条の2第1項第1号、宅地建物取引業法施行規則 17条の2第4項
みなと不動産の従業者である佐藤さんが田中さんと会い、田中さんが請求すると、佐藤さんは従業者証明書を示します。みなと不動産は、佐藤さんを名簿に記載して10年間保存します。
根拠: 宅地建物取引業法 48条1項、宅地建物取引業法施行規則 17条の2第4項
携帯は常に、提示は請求があったときです。名簿の保存は10年です。
根拠: 宅地建物取引業法 48条1項、宅地建物取引業法 48条2項
帳簿約1分
この節でよく出るのは
- ★ 3回宅建業者は、事務所ごとに帳簿を備え、取引のつど、年月日や物件…
自ら売主となる新築住宅では、引渡しの年月日と床面積も記載します。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 18条1項8号
帳簿は、各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間です。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 18条3項
左右の比較従業者名簿と帳簿のちがい
閲覧の規定があるのは、従業者名簿だけ。
根拠: 宅地建物取引業法 48条3項、宅地建物取引業法 48条4項、宅地建物取引業法 49条、宅地建物取引業法施行規則 17条の2第4項、宅地建物取引業法施行規則 18条3項
みなと不動産は、田中さんとの売買が成立したので、帳簿に年月日、物件の所在、面積、報酬の額を書きました。年度末に閉鎖し、5年間保存します。
根拠: 宅地建物取引業法 49条、宅地建物取引業法施行規則 18条3項
覚えるコマ
名簿は最終の記載の日から10年で閲覧に供する。帳簿は閉鎖後5年で閲覧なし。
間違えやすいところ:自ら売主の新築住宅の帳簿は閉鎖後10年。案内所には名簿も帳簿も備えない
従業者名簿と帳簿は、保存期間や閲覧がどう違うか? 名簿は最終の記載の日から10年で閲覧に供する。帳簿は閉鎖後5年で閲覧なし。
保存は、閉鎖後5年、新築住宅は10年です。閲覧の義務は名簿だけです。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 18条3項
標識と案内所約3分
この節でよく出るのは
- ★ 3回建売の現地に、案内所を出すことになりました。大野誠社長が「こ…
- ★ 3回他の宅建業者の分譲の代理や媒介をする案内所も、標識を掲げます…
- ★ 2回標識を掲げる場所には、事務所以外の継続的な施設、分譲の現地、…
建売の現地に、案内所を出すことになりました。大野誠社長が「ここでは、契約もするよ」と言いました。木村さんは「契約や申込みを受ける案内所には、専任の取引士を置くよ。届出は、業務を始める10日前までだ」と確かめました。佐藤さんが「契約をしない案内所も同じですか」と聞くと、木村さんは「標識はどの案内所でも掲げる。取引士と届出は、お客さんが契約や申込みをする案内所だけだよ」と答えました。
根拠: 宅地建物取引業法 50条1項、宅地建物取引業法 50条2項、宅地建物取引業法施行規則 19条3項
標識を掲げる場所には、事務所以外の継続的な施設、分譲の現地、分譲の案内所、展示会などの催しの場所が入ります。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 19条1項1号、宅地建物取引業法施行規則 19条1項2号、宅地建物取引業法施行規則 19条1項3号、宅地建物取引業法施行規則 19条1項5号
契約を結んだり、申込みを受けたりする案内所には、成年の専任の取引士を1人以上置きます。契約も申込みもしない案内所には、要りません。
根拠: 宅地建物取引業法 50条1項
契約や申込みをする案内所は、所在地、業務内容、業務をする期間、専任の取引士の氏名をあらかじめ届け出ます。届出は、業務を始める日の10日前までにします。
根拠: 宅地建物取引業法 50条2項、宅地建物取引業法施行規則 19条3項
判定の流れ案内所に必要なもの
標識は、契約をしない案内所でも掲げる。
根拠: 宅地建物取引業法 50条1項、宅地建物取引業法 50条2項
みなと不動産は、新築の分譲の案内所を出し、そこで契約を結びます。成年の専任の取引士を1人以上置き、標識を掲げ、10日前までに届け出ます。
根拠: 宅地建物取引業法 50条2項、宅地建物取引業法施行規則 19条3項
覚えるコマ
契約や申込みを受ける案内所は3つ必要。受けないなら標識だけ。
間違えやすいところ:届出は、業務を開始する日の10日前までに、免許権者と所在地の知事へ
案内所では、専任の取引士・標識・届出は、それぞれ要るか? 契約や申込みを受ける案内所は3つ必要。受けないなら標識だけ。
本試験では「宅建業者Aの従業者Cが、買主Bに『必ず値上がりする』と告げて契約を勧めた」のように出ます。Cも禁止の対象かどうかを読み取ります。
根拠: 宅地建物取引業法 47条の2第1項
他の宅建業者の分譲を代理・媒介する案内所の標識は、その案内所を設けた代理・媒介の宅建業者が掲げます。売主が、その案内所に自分の標識まで掲げる決まりはありません。
根拠: 宅地建物取引業法施行規則 19条1項4号
ただし、不動産フェアなどで、複数の宅建業者がそれぞれ別の物件を扱うときは、宅建業者ごとに専任の取引士を1人以上置きます。
根拠: 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第31条の3関係
売主と代理の宅建業者が同じ案内所にいるなら、双方がそれぞれ専任の取引士を置かなければならない、は誤りです。同じ物件を扱うなら、どちらか一方で足ります。
根拠: 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第31条の3関係